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不正咬合の原因・・・>食生活と歯列不正

食生活と歯列不正の関係については様々な議論があります。

どちらの意見が正しいかは現在のところはっきりはしていないと思われます。

食生活と顎の小進化を支持する意見

国立科学博物館「大顔展」1999年より

顎の小進化が進み歯列不正が増えたとする説は、井上直彦氏(故人)らの研究により唱えられました。その内容は「咬合の小進化と歯科疾患〜ディスックレパンシーの研究〜」1986年医歯薬出版にまとめられています。同様の内容が「子どもと口の未来のために」メディサイエンス社で一般書としてみることができます。

鹿児島大学の伊藤学而教授は次のように述べています。(以下引用)

「昔も今のように歯並びの悪い人が多かったのだろうか。まず、この素朴な疑問を確かめるために、東京大学、京都大学、九州大学、長崎大学に保管されている日本人古人骨の標本を調べました。その結果、顎骨の大きさは時代が下るにつれて小さく華奢になり、これに伴って不正咬合の頻度も縄文時代の22%から江戸時代の56%へと増加し、歯科疾患の罹患状況も時代によって変動していることが確認されました。この原因はおそらく食生活の変遷にあると考えられましたので、全国6地区において、昭和元年生まれから40年生まれまでの5世代について、食生活と歯や顎骨の大きさ、不正咬合との関連を調査しました。地域による差はありますが、昭和30年生まれ世代以降、食生活が大きく変化し、それが顎骨の大きさ、歯と顎のディスクレパンシー、不正咬合に影響を及ぼしていることが確かめられました。このことは、その後に行ったオーストラリア、ニュージーランド、ケニアにおける調査でも確かめられております。」ここまで引用

動物実験でその証明を試みようとする研究もあります。 PubMed文献検索

Yamadaらのラットを用いた実験がありあります。”The effect of dietary consistency on bone mass and turnover in the growing rat mandible.”Arch Oral Biol. 1991;36(2):129-38. この論文ではラット(ネズミの一種)に餌の硬さを変えて下顎骨の成長を調べると、軟らかい餌を与えた群の方が、硬い餌硬い餌を与えた群より成長が遅くなる結論付けています。

食生活の変遷にともなう顎の小進化の因果関係の疑問点

上述の文献等をみると食生活の変化と顎の発育の間には因果関係があるかにも思えます。

しかしながら、骨格系は遺伝的影響が大きいとする文献も多々あります。PubMed文献検索

また動物実験によりそれを証明しようとsることにも無理があります。実験に使用した動物はラットであり人間の顎顔面骨格形態の成長と同じとは言えません。また人間の食生活のパターンはラットに比べはるかに複雑で、ラットの実験のように「硬い」と「軟らかい」の2つのパターンの実験結果をそのまま当てはめることには無理があります。

顎の大きさの縦断的調査と食生活の変遷を比べてみて、顎の大きさの小進化を軟食化に結びつけることはできません。もしそれを証明したいのであれば、ヒトにおいて食生活パターンの違う群を縦断的に調査をする必要があります。(かなり難しい調査だと思われます)

食生活の改善で不正咬合を予防できるでしょうか

硬いものを多く取り入れた食事をしても不正咬合を予防できる可能性は低いと思われます。しかしながら硬いもの軟らかいものをバランスよく、よく噛んで食べることは、様々な観点より大切なことです。