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Tomisawa Dental Clinic in Chofu -shi Tokyo

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治療開始時期〜その2

矯正治療の開始時期について〜その1〜では隣接する因子についてお話しましたが、矯正治療の観点からは別の見方が必要です

治療開始時期をめぐり症例を大別すると

これら4つのパターンが考えられます。これを表にすると以下となります。

治療開始時期

もちろん症例によって開始時期は違うでしょうし、似通った症例でも治療開始時期には多少の幅があります。またこれらの中間的症例もあります。しかしながらこれもまたその開始時期をめぐっては完全に意見が一致しているわけではありません。

第1期治療を行うのが望ましい症例
骨格系への影響が懸念される症例
正中偏移症例

正中に偏移がある場合などは顎の位置が歯に規制を受けて不対称に成長する可能性があるので早期に治療を開始した方が良いといえます。

右の症例は乳歯期の症例ですが、右側中切歯部にクロスバイトがあり顎が右にシフトしています。正貌感にも非対称性が認められるため早期の治療が必要と考えられます。

 

 

下顎前突症例

下顎前突の症例(軽度〜中等度)でも同様に早期に前歯部の咬合関係を改善しておくこと(第1期治療)が望ましいといえます。

右の症例は前歯部が永久歯に交換し、犬歯と小臼歯はまだ乳歯が残っています。この様な症例においても前歯部の咬合関係を改善して、骨格系への影響をできるだけ減らしておくことが治療上の利点があると考えられます。文献的には早期治療の意義が認められています。

しかしながらこの時期に前歯部の反対咬合が改善できたとしても、下顎骨には思春期における成長の余力があるため、再発するケースがあり、さらなる治療(第二期治療)が必要となります。さらに重度の症例では外科的な矯正治療(下顎骨の切断後退手術)が必要な場合もあります。そうした症例では第1期治療は行わず思春期後期以降に外科的矯正を行うことがよいといわれています。

下顎前突治療ガイドライン

左に示した図は「下顎前突研究会」が仙台ClassVシンポジウムの総括として提案している成長期反対咬合者に対する治療のガイドラインです。(「矯正YearBook200]クインテッセンス出版より改変)現在のところこのガイドラインに沿った治療が合理的かと思われますが、顎間関係の不調和の程度をどこでラインをひくのか、第1期治療の時期をいつにするのか議論の余地があります。

第1期治療の開始時期については「乳歯期から開始する」という考えや「前歯が永久歯に交換してから開始する」といった意見があります。一般的に言って乳歯期では口腔衛生管理や器具の自己管理が困難な場合が多いように思われます。

上顎前突症例

上顎前突の症例でも早期に治療した方が利点が多い症例があります。

右の症例は前歯は永久歯に交換し、乳犬歯と乳臼歯がまだ残存しています。上顎前歯の前突と下顎の後退が見られます。この症例においては第1期治療として、下顎の前方移動と臼歯部の挺出を行い、上顎前歯部の舌側移動を図りました(引っ込めました)。その後成長観察を行い第2期治療の必要性を検討していきます。今後下顎は前方に成長していくので、これで満足できればそれ以上の治療は必要ないかもしれません。

上顎前突の第1期矯正治療においては、機能的矯正装置を用いる場合が多くその効果については様々な研究で確認されています。

口腔習癖による不正咬合がある症例

主な口腔習癖として次の様なものがあります。

いずれも歯列や咬合に悪影響を及ぼす習癖といえます。比較的多くみられる習癖が指しゃぶりによる上顎前突です。軽症のものではこれをやめれば、自然に治るものが多いといえます。しかし重症化して開咬状態になると通常弄舌癖を併発し、治りにくくなります。

こうした症例では早期に習癖を取り除くための矯正装置を用いるのが良いと考えられます

弄舌癖症例

右の症例は前歯の交換期に、開咬を主訴として来院されたお子さんです。弄舌癖があったためタングクリブという舌癖矯正装置を装着して永久歯への交換を待ちました。正中離開もあったためダイレクトボンディングシステムを用いて前歯部の整列を終えワイヤー固定にて第1期治療を終えました。今後の成長如何によっては第2期治療が必要になるかもしれません。

こうした舌癖の早期治療の効果についてはいくつかの文献で考察されています。

抜歯を回避できる症例

前歯がはえそろった段階で前歯部に限局した経度〜中等度の叢生がある場合、早期に治療を開始することにより抜歯治療を回避できる症例があります。こうした症例を仮に犬歯まで交換が進んだ段階で治療しようとした場合、前歯のスペースを確保するため犬歯の移動が必要となります。そのために第1小臼歯の抜歯が必要になる症例があります。これを早期に治療を行い、犬歯交換前に前歯部の配列を終えておくと、犬歯の位置が正常に治まるか、変異しても軽度ですむ可能性あります。

前歯部叢生症例

右の症例は前歯がはえそろい側方歯群が残存し、側切歯部にクロスバイトがあります。この症例は早期に上顎の側方拡大を行い前歯部の配列を終えて、側方歯群の交換を待ちました。結果としては犬歯の位置は自然にほぼ問題なく治まり、第2期治療は行わずに済みました。

しかしながら重度のものでは、早期に前歯部を配列しても、犬歯の偏移が大きく抜歯が必要になる症例もあります。こうした症例では第1期治療は行わず、永久歯の完全萌出を待ってから治療するものもあります

第1期矯正と第2期矯正が必要な症例

ここまでに示した症例もすべてが第1期治療で完了するわけではありません。成長発育に伴い歯列や咬合状態は変化しますので永久歯がすべてはえそろってからさらなる矯正治療が必要な場合もあります。

第2期治療

右に示した症例は第一期矯正治療として上下の歯列弓を側方拡大して前歯部の配列を行っています。しかしながらその後の顎骨の成長が十分ではなく犬歯から小臼歯の配列はうまくいきませんでした。こうした症例では第2期矯正治療が必要となります。

第1期矯正治療のみで終了できるか、あるいは第2期治療も必要になるかは顎骨の成長に関わっています。どのパターンをとるかは的確な診断ときめ細かな経過観察が必要となります。

第2期治療のみで治せる症

矯正治療の開始時期〜その1〜でお話ししたとおり、様々な都合で矯正学的にみて適切な時期に治療できない症例もあります。しかしながら、第1期治療の機会を逃したからといって治療ができないわけではありません。かなり重症とみえる症例でも、第2期治療のみで治療可能なものも多くあります。見方を変えれば永久歯列完成後に矯正を行っても満足な結果を得られるのであれば、早期に治療開始しなくてもよい症例もあるといえます。

下の症例は永久歯列完成後(15歳)から治療を開始した症例です。

第2期治療例