この旅の写真はココ(03/2月〜3月)

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ハヌマン・ジー


ラクダとお留守番

「デジャート?」

プシュカルを歩くと時々こんな声がかかる。どうやらインド人、「ザ」の発音が苦手なようで、「デザート」がえらくかわいい音になっちゃってるのだ。プシュカルは砂漠の真ん中の町。ラクダに乗って砂漠を歩くキャメルサファリがさかんなのだ。まあ、砂漠と言っても完全な砂ではなくていわゆる礫砂漠なんだけど。

えびはイマイチこの手のものに興味はなかったりするのだが、夫は反応しまくる。毎日 「ラクダは?ラクダは?ラクダは?ラクダは?」 と訴えるので、夫の体調を見て、夕日を眺めるサンセットサファリに出かけてみた。

似合いません
◆帽子がなかったので急遽スカーフを巻きつけてあげたら、とんでもなく怪しい感じに。


ラクダを連れて案内してくれたのは、お子ちゃま2人だった。オトナに案内してもらうといろいろと面倒くさいので(ほら、しゃべるのとかさ)、これは願ったりかなったり。

えび担当のA少年の口癖はアイアム ストロングマン(←いっちょ前に・・・)。好きなものは冷たい水(観光客の持っているボトル入りミネラルウォーターの事)らしい。けっこうおしゃべりで少々ウザいところもあるが、そこは子供。めんどくさくなってきたらヒンディ映画の歌を歌えば、大喜びで一緒に歌いだす。ラクダに乗ってヒンディ映画ソングメドレーを歌いながら、砂漠を行くインド人少年と日本人妻。特殊な絵面だ。

歌う2人
*歌詞もメロディもかなり適当なA少年の歌だが、
気持ちよさげに堂々と歌ってるので良しとする。

夫担当B少年は、おとなしいかと思ったら、突然のぼせてラクダに立ち乗りしたりする(そしてA少年に怒られてしゅんとなる)突発的性格。

英語はちょこっとだけというA少年(B少年はまったく話せない)、何度年齢を尋ねても「フィフティ ツー」と答える。こんなにフレッシュな52歳が存在するとはさすがインド。というわけはもちろんなくて、ヒンディ語で聞いてみたら17歳らしい。あー、フィフティーン プラス ツー って事か。難しすぎるわい。

インド人の子供はだいたいが実年齢よりはるかに幼く見える。自称17歳の彼は12歳くらいにしか見えないし、15歳だというB少年は10歳くらいにしか見えない。一見頼りなげな彼らだが、
「僕らは小さいころから毎日毎日ラクダに乗ってる」
だけあって、ちゃーんと操ってくれるのだ。

そして幼く見えても彼らもインド人。キャメルサファリ中何度も
「帰ったらボスに グッドデジャートだった、そしてグッドボーイ達だったって言ってね?絶対言ってね?約束だよ?でないとボスは僕達をぶつんだ。ホントだよ、ぶつんだから」
と念を押された。もし本当にぶたれてるのならひどい話だが、オトナの同情をひいてちゃんと根回しするあたり、しかもこういう英語だけはペラペラでてくるあたりは、なかなかシタタカだ。

乗り物となってくれるラクダたちはと言えば。えびのラクダはジョニーという名のアメリカンテイストただようヤツ。でもジョニー、凶暴なのよね。近寄ると威嚇するし「咬むから気をつけて!!」と脅される。乗る時も「早く早く!!」とせかされて、ラクダが座るなり瞬時にまたがらなければいけない。ジョニーに半目でじーっと見つめられると、ビクビクしてしまう始末だ。


貧相なヒトコブラクダ
ラジャスタンのラクダは特有の模様刈り込みがなされている。しかしインドのラクダって、以前パミール高原で乗ったフタコブラクダ(下の写真)に比べたらなんか貧相だ。
毛が長くて立派なフタコブラクダ


3時半に町を出発するとすぐに荒涼とした風景が広がった。しばらくして郊外に出たところで、尻を休めるため(ラクダ乗りはお尻に優しくないと思う)にちょっと休憩。

A・B両少年にジュースを買ってきてもらう事にして、えびと夫は砂漠でお留守番。少年達は夫の乗っていたラクダで出かけるので、えびラクダ・ジョニーくんも一緒にお留守番となった。何にもない大地の真ん中にぽつんと、えび、夫、そしてジョニー。

「ジョニーが逃げ出したらつかまえてねー」
と言って風のように走り去っていった少年達だが、つかまえろって、こんな凶暴ラクダをどうやって?ビクビク。しかもジョニーをつないでいったものとは↓

ジョニー。逃げてもいいのよ。
つないだ先が頼りなさ過ぎる・・・。

ちょっとジョニーが引っ張れば、たちまち抜けてしまいそうな木・・というより草むらなんである。

しかし「つながれた状態=もう動けない」という刷り込みができているのか、ジョニーは一応おとなしくとどまっている。
ジョニー・・・・。あなたって、ひょっとしてちょっと頭悪い・・・・?

とは言え、ちょっとジョニーが移動するだけでも逃げ出さないか心配でビクッ。近寄ろうとすれば、反芻した胃液をもぐもぐと口のまわりにあふれさせるのでまたビクビクッ。ラクダってやる気のなさそうな顔に見せかけておいて、意外と凶悪なのである。せっかくの雄大な景色の中、2人と一頭でちょっとビクビクしながらのお留守番なのであった。

お留守番風景
夫が丘の上から撮ったお留守番風景。えびとジョニーの微妙な距離をご覧あれ。

少年達がジュースを手に戻ってきたのは、それから30分以上過ぎてからのこと。ここでたらっと時間をすごしたため、肝心のサンセットポイントに着くころには日もとっぷりと暮れ、ナイトサファリへと変わってしまっていた。そして町までの帰路も、またしゃべるのが面倒なので大声でヒンディ映画ソングを歌いつつ、そろそろむけてきた尻の皮をさすりながら向かう、そんなインドの歌うキャメルサファリなのであった。
夕日
◆ポイントに着く前にラクダの背に揺られながら撮った夕日。

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