この旅の写真はココ(03/2月〜3月)

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ハヌマン・ジー


プシュカルパスポート

インドで一番やっかいなもの。それは物乞いでもリキシャの運転手でもない。群がる客引きでもない。えび的に言わせてもらえば、”プージャ”である。プージャとはヒンドゥー教のお祈りの儀式なのだが、これを執り行ってくれるブラーミン(僧侶階級)どもがなっとらん。えらそうで強引で押し付けがましくて。彼らは聖地の暴れん坊将軍なのである。

聖地プシュカルは湖沿いにガート(沐浴場)がいくつか並んでいる。で、新しくこの地にやってきた外国人旅行者は、やっぱりまずここに散歩にやってくる。そりゃあもう、お布施によって生きるブラーミンにとってはこの上もない金づるだろう。祝福の押し売りとなって、旅行者めがけてやってくるのだ。

えびも一人で朝っぱらからふらふらとしていたのだが、湖に近づいたとたん、イキナリえらそげなジイサンにつかまった。そしてプシュカルに来たからにはプジャしなくては、と諭される。

小心者えびとして、とりあえず神様と名のつくものは敬っとくのが吉だろうとは思うのだが、ここはインド。こんな神聖なる宗教儀式にも金がつきもの。そこでポケットから10ルピー取り出し、

「今これだけしか持ってないから。プージャしてもらってもこれしかあげられないからね」

と念を押すのは忘れなかった。10ルピーという金額は去年南インドを旅した時、たいていのお寺であげた金額が5ルピーくらいだったので、北インドしかも観光地価格で倍にしてみたのである。

プージャ
◆ブラーミンの言う通り自分や家族の長寿や繁栄を祈り、
最後にすべての悪いカルマを手に持った花とともに湖に投げやる。
そして額に赤い印をつけられてプージャ終了。


最後に金額でもめるかなーと思ったら、ジイサンは意外とあっさりと10ルピーを持って笑顔で立ち去っていった。あれっ。インドなのに(←失礼)。いや、以前CSのディスカバリーチャンネルで放映されているロンリープラネットというバックパッカー番組の中で、レポーターがプシュカルでプージャをした場面があったのだが、その時ブラーミンに「As you like」と言われて彼女が払った金額がな、な、なんと、
2000ルピー!!!(=約5000円。あほか!)・・・というのを見ていたので絶対ごねられると思ったのだ。けっこう聞き分けいいじゃん。


まね絵1
◆プシュカルはインドでは珍しいブラフマンの聖地。これはお土産に売ってた神様絵、プシュカルバージョン。

インドの神様絵はまったく同じ構図で描かれたものが氾濫しているので、オリジナルがどれなのかよくわからない事態に陥っている。

まね絵2↑これとか
まね絵3↑これもそっくり同じまねっこ構図。ここまで堂々としてるといっそ清々しい。


そして昼間。今度は夫と2人でガートにやって来た。早速また、あちこちから沸いて出てくるプジャ部隊たち。断っても断っても、そりゃあしつこい。中には首からぶらさげた「ブラーミン免許」なるものを見せて、プージャをせまるやつもいる(どうでもいいけど、その免許どこが出しとんじゃ)。プシュカルに来てプージャをしないとは何事だ、というわけだ。だからあ、朝やったんだってば!やったって言ってるじゃん!!ほら、この額の赤い印見てよ!というえびに、一人のブラーミンが告げた。

「しかしあなたにはプシュカルパスポートがないではないか」

は?プシュカルパスポート?何ですかそれ。

「プシュカルパスポートさえあれば、あなたがたは自由にここを歩けるのだ。私がさずけてあげよう。お金が少ししかない?ノープロブレム。君の好きなだけでいい」

そう言って彼は朝のジイサンと同じようにえび夫妻にプージャしてくれた。しかし違った点がひとつ。最後に、手首に赤い糸を結んでくれた事だ。
「さあ、これがプシュカルパスポートだよ。プシュカルでプージャした人はみんなこれを手首に巻いてるんだ」

・・・くそう。朝のジジイめ、10ルピーしかあげなかったからケチりやがったな。どうりであっさり笑顔だったわけだよ。肝心のもの巻いてくれてないじゃん!
プシュカルパスポート


2度目のプージャの後はちゃんと(?)料金でもめた。はじめに「いくらでもいいから」と言ったろうもん!などと言う論理は彼らには通じない(というかインドでは通じない・・・?)。結局1人20ルピーずつ払って開放してもらった。いやー、いい商売だよなあ。そして彼の言うとおり、それ以降よって来るブラーミンにプシュカルパスポートを見せると効果てきめん。こんな事なら始めからちゃんとした(?)プージャやっときゃ話は早かったわけね。(ちなみにこのプシュカルパスポート、ヒンドゥ教の人ならだいたいみんな手首に巻いてるものとまったく同じ糸なので、どっかで糸を買って自分で巻けばよいという話もある)

そしてその後。町で話した人に「プージャにいくら払った?」と聞かれる事数回。「20ルピー」と答えると、「やすっ!!」と子供にまでせせら笑われた。聞いてみたところだいたい皆100ルピーくらいは払うらしい。まじで?それはちょっと信用ならんと思ったえび、ガートで観察してみる事にした。

インド人のばあちゃんと孫の2人連れ巡礼者がプージャ後、差し出したのは50ルピーちょい。するとプジャしてあげたブラーミンはこれじゃ少なすぎると言って受け取ろうとしない。おおっ、やっぱりえびの金額は少なすぎたのねっ、と反省しかけたその時。
よく見りゃそのブラーミンは、朝のあのジジイ。反省すぐさま取りやめ。稼いじゃってんじゃん、ジジイ。

とにかくプシュカルでは、プシュカルパスポートなしには穏やかな日々は送れないと観念したほうがいい。どうせ湖にあつまる観光客はプージャから逃れられないのだから、いっそ「プージャ込み入場料」でも取ればいいのに。まあ聖地でのブラーミンとの俗な戦いもまた楽し、かな。いやあんまり楽しくない・・・。えびにとって、プージャ道はまだまだ険しい。
プシュカルガート
◆ガートには犬やら牛やら鳥やらいて楽しい。人間ってばかだなあと思ってるんだろうなあ。

ギンギラギン
◆太陽もおばちゃんもギンギラギン。

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