この旅の写真はココ(03/2月〜3月)

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ハヌマン・ジー


王になった日

さて、スイートルームに案内してもらう。城の狭くて暗い階段をぐるぐるのぼって着いた城の屋上は、さえぎるものない大地がどこまでも続くそれは素晴らしいもので、まさに眼下に町を一望できる王様の眺め。そんな屋上の真ん中にドドンとその部屋はあった。重厚な響きのベルがついた鍵をあけると、そこは・・・

暗くひんやりとした空気の中、入り口にはいきなりブランコ。そして机のある小さな部屋、低いソファのある部屋、メインの部屋、そしてカーテンの奥にはベッドの部屋と続いている。カーテンは重々しい紺のビロードで、ファブリックも落ち着いた渋めの色遣いでまとめてある。壁のあちこちには大きなラジャスタンの細密画がかかっていて、暖かな色の照明に照らし出されている。いやあ、今までオミヤゲ用の細密画しか見たことなかったけど、本物は全然違うわあ。ベッドはもちろん天蓋つきの堂々としたもの。そのどれもが下手にピカピカしてなくて、歴史と重みを感じさせてくれる。

部屋にうっすらと積もった砂さえも、まあ砂色のステキなお部屋!と贔屓目に見てしまう始末。(泊まってみてわかったが、これは掃除をしていないせいではなく、砂の吹き荒れるこの季節のマンダワでは、どうしようもない事が判明)これよ、これ!こういう城っぽい部屋に泊まりたかったんだってば!

うわーっ!ここ泊まりたい!泊まる泊まる!値段も予想よりかなり安く、一泊3500ルピーとの事。2000ルピーも出してイマイチ納得いかない部屋に泊まるくらいなら、絶対高くてもスイートがいい!こちとらカードがあるんでい!ドンと来いってんだ!プシュカルへのタクシーから始まった贅沢はここに極まった。城のスイート。スイートですよ。一部屋しかないスイート=その城で最もゴージャスな部屋ですよ。なんとうっとりな響きなんでしょう。いわばマハラジャとマハラニってわけですか。ほほほほ。
予が王じゃ。

「えー、ところでお車はどちらの方に」
「車?車って?」
「タクシーでいらしたのでは?」
「いえ、バスで来ました」
「・・・バスで?プシュカルから?」


どうやらこのホテル、えび夫妻の他の客はフランスからのツアー客(しかしこんな町にツアーを出してるのもすごいぞ)と一組の金持ちインド人家族のみ。個人でやってくる客はみなタクシーをチャーターしてくるらしい。バスでやって来た客がスイートに泊まるなんてインド的に言えば「ありえな〜い!」事なんだろう。ごめんね、インド的階級社会を守らずに。ジャパンマネーを恨んでください。



門
◆門も威風堂々。ちょっと朽ち果て気味だけど。

◆きちんと写真撮ってないので、かなりうろ覚えですが、こんな感じ。

見取り図

王の眺め

↑ベッドサイドの窓からの眺め。

王

部屋と部屋の間は
カーテンとアーチで
仕切られております。→


ヒマーチャルプラデーシュの青年 このホテルのボーイは妙に親しみ深い顔の人が多い。最初ネパールからの出稼ぎかと思っていたのだが、話して見るとヒマーチャル・プラデーシュから働きに来ているそうだ。

彫りの深いアーリア系のインド人に囲まれているからか、向こうもこの平べったい顔が懐かしいらしい。
「ネパール人かと思いました」
とここでも言われたのだった。それにしても彼らにはやっぱりあんまりターバンが似合わないなあ。

夕食は中庭のこぢんまりしたレストランで。スイートの鍵についた鈴をこれ見よがしにぢりんぢりん鳴らしながら歩くと、何も言わないうちから
「スイートのお客様でございますね。お席はこちらにご用意しております」
と給仕が寄ってくる。くうっ!気持ちいい〜っ!!(その後談話室にいる時にも、「あなたがたがスイートのお客様ですね」とオーナーが挨拶にやってきたりしたのだった。スイートの威力ってすごい)
中庭には泊り客全員集合でツアーの西洋人がウロウロしているのだが、しょせんキミ達スタンダードでしょ。庶民でしょ。この人たちの中で、えび夫妻が一番お高い部屋にお泊りよ。何と言っても1室しかないスイートの客だからね。ほほほ。ほれほれ、レストランの座席も一団高いところになっておる。
予が王じゃ。

さすがは宮殿レストランの500ルピーもするディナーだけあってダンスショーなぞあったりするのだが、これが爆笑。出し物はファイヤーダンス。と言っても別に芸があるわけでも何でもなく、後ろに楽隊を引き連れ、手に火のついた棒を持ったジイサン=チャームポイントはツルツルピカピカのほっぺと笑顔 が、ヨロヨロしながらへっぴり腰を微妙に振って歩くだけ。うーん、あの微妙なヨロヨロ具合が実は名人芸だったりするのだろうか。

女子高生じゃないんだから

そして各テーブルの間を練り歩くのだが、ここでもスイートは別格。テーブルのすぐ前のポイントにとどまって存分に腰を振り、こっちの爆笑を誘う。ほとんど無芸に近い芸なのに、こんなに笑わせてくれるジイサンなんてなかなかおらん。いや彼的には別に笑いを取ろうと思っているわけではなかろうが。レストランを出る時はちゃっかり入り口に控えてチップを待ってるし。もちろん、王たるものチップのひとつも与えずして何としよう。堂々と10ルピー(←弱気・・・)を渡し、ジイサン歩きで腰を振り振り王の部屋へと帰るのであった。

  ファイヤー

一瞬、まるでかっこいいかのような
ジイサンですが、その実態は↓

微妙なダンス
◆えびの乏しい技量ではとてもジイサンの得意げスマイルを描ききれませんでした。ちょっとあの微妙な動きも再現不可能・・・。

部屋に戻ると下界がなんだか騒がしい。奇しくもこの日、クリケットのワールドカップは因縁の対決・インドパキスタン戦。そしてどうやら、今インドが勝利をおさめたらしい。静かで小さなこの町でも、遠くから花火や爆竹の音が聞こえてくる。おお、民が喜んでおる。予も嬉しいぞ。湯沸しコイルで作ったお茶をすすりながら(←ここでもまた弱気な王)、バスルームに出没したゴキブリも優雅な物腰で水攻めにして、王たる夜を満喫するのであった。

翌日、チェックアウト時のカードの清算書を見てしおれた虫のようになるまで、王様気分は持続した。(宿泊費3500、夕食500×2、朝食250×2、に税金がついて全部で何と5592ルピー!たった一日なのに!インドなのに!)
いい夢見せてくれたよ、マンダワ城。

ああチェックアウト
◆一日だけの夢でした〜。いつもの格好でいつもの様な宿へ・・。

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