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かうて、つれづれとながむるに、などか物詣もせざりけむ。母いみじかりし古代の人にて、初瀬には、あなおそろし、奈良坂にて人にとられなばいかがせむ。石山、関山越えていとおそろし。鞍馬は、さる山、率て出でむいとおそろしや。親のぼりて、ともかくも、とさしはなちたる人のやうにわづらはしがりて、わづかに清水に率てこもりたり。
それにも、例のくせは、まことしかべいことも思ひ申されず。彼岸のほどにて、いみじう騒がしうおそろしきまでおぼえて、うちまどろみ入りたるに、御帳のかたの犬防ぎのうちに、青き織物の衣を着て、錦を頭にもかづき、足にもはいたる僧の、別当とおぼしきが寄り来て、ゆくさきのあはれならむも知らず、さもよしなし事をのみ、とうちむつかりて、御帳のうちに入りぬと見ても、うちおどろきても、かくなむ見えつる、とも語らず、心にも思ひとどめでまかでぬ。
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