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それよりかみは、ゐのはなといふ坂の、えも言はずわびしきをのぼりぬれば、三河の国の高師の浜といふ。
八橋は名のみして、橋のかたもなく、なにの見どころもなし。
ふたむらの山の中にとまりたる夜、大きなる柿の木の下に庵を造りたれば、夜ひとよ、庵の上に柿の落ちかかりたるを、人々ひろひなどす。
宮路の山といふ所越ゆるほど、十月つごもりなるに、紅葉散らで盛りなり。
嵐こそ吹き来ざりけれ宮路山まだもみぢ葉の散らで残れる
三河と尾張となるしかすがの渡り、げに思ひわずらひぬべくをかし。
尾張の国、鳴海の浦を過ぐるに、夕潮ただ満ちに満ちて、こよひ宿らむも中間に、潮満ちきなば、ここをも過ぎじと、あるかぎり走りまどひ過ぎぬ。
十月つごもり(三十日):1020年11月18日
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