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降順   更級日記を読む

42
継母なりし人の上総大輔を名乗ること
継母なりし人、下りし国の名を宮にも言はるるに、こと人かよはしてのちも、なほその名を言はると聞きて、親の、今はあいなきよし言ひにやらむ、とあるに、

朝倉や今は雲居に聞くものをなほ木のまろが名のりをやする


41
なにともなきにものぞ悲しき
旅なるところに来て、月のころ、竹のもと近くて、風の音に目のみ覚めて、うちとけて寝られぬころ、

竹の葉のそよぐ夜ごとに寝ざめしてなにともなきにものぞ悲しき



秋ごろ、そこを立ちてほかへうつろひて、そのあるじに、

いづことも露のあはれはわかれじを浅茅が原の秋ぞ恋しき


40
契りおきし花のさかりを告げぬかな
そこなる尼に、春まで命あらばかならず来む、花ざかりはまづ告げよ、など言ひて帰りにしを、年かへりて三月十余日になるまで音もせねば、

契りおきし花のさかりを告げぬかな春やまだ来ぬ花やにほはぬ


39
あからさまに来てみれば
十月つごもりがたに、あからさまに来てみれば、こぐらう茂れりし木の葉ども残りなく散りみだれて、いみじくあはれげに見えわたりて、ここちよげにささらぎ流れし水も木の葉にうづもれて、あとばかり見ゆ。

水さへぞすみたえにける木の葉ちるあらしの山の心ぼそさに

作者は心細さを好むような向きもあるから、水が澄み堪えているようすに共鳴していると読みたい。私のように住み絶えてしまった、見えなくなったとしても、見えない裏側で水は澄み渡って、山の心細さを味わっているのだ、と。


38
苗代の水かげばかり見えし田の
京に帰り出づるに、わたりし時は、水ばかり見えし田どもも、皆刈りはててけり。

苗代の水かげばかり見えし田の刈りはつるまで長居しにけり


37
思ひ知る人に見せばや山里の秋の夜ふかき
八月になりて、二十余日の暁がたの月、いみじくあはれに、山の方はこぐらく、滝の音も似るものなくのみながめられて、

思ひ知る人に見せばや山里の秋の夜ふかき有明の月


36
秋の夜の妻恋ひかぬる鹿の音は
暁になりやしぬらむと思ふほどに、山の方より人あまた来る音す。おどろきて見やりたれば、鹿の、縁のもとまで来て、うち鳴いたる、近うてはなつかしからぬものの声なり。

秋の夜の妻恋ひかぬる鹿の音は遠山にこそ聞くべかりけれ


知りたる人の、近きほどに来て帰りぬと聞くに、

まだ人目知らぬ山辺の松風も音して帰るものとこそ聞け


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かめゐ
かめhr @ pluto.dti.ne.jp