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河川上流中流と海岸を回復させるための
  新たな工事方法



2019年8月1日一部変更、2017年7月7日一部変更、
2016年3月17日一部変更、2015年12月11日一部変更、2015年8月20日掲載

河川上流中流と海岸を回復させるための新たな工事方法

河川上流中流や海岸の残念な状況
 私のWEB上の論述では、上流と中流での従来からの河川工事の多くが誤ったものであった事を明らかにしています。 従来の上流中流の河川工事は、治水に利するどころか逆に治水状況を悪化させることの多い河川工事でした。

 下流域での成功体験をそのまま上流や中流に適応させようとして、多くの河川の上流や中流にコンクリート護岸を作り続けてきました。
 今では、コンクリート護岸の無い河川上流や中流を探し出すことさえ困難な状況です。 コンクリート護岸はその周囲の石や岩を容易に下流に流し去ってしまいます。
 どんな山奥の渓流に行っても砂防堰堤が流れに立ちはだかっています。
砂防堰堤はほとんどの場合で、大きな石や岩を下流側に流下させる事を無くして、土や砂や小砂利などの小さな土砂を下流に流し続けています。

 コンクリート護岸や砂防堰堤やその他の工事に伴って、工事現場から大きな石や岩が大量に持ち出され続けました。 河川上流中流での石や岩の不必要な持ち出しが、石や岩のある流れが元々持っていた自然の治水力を失わせてしまいました。
 河川上流や中流のそれらの工事の全てが誤っていたとは考えていません。それらは、多くの場所でそれぞれの岸辺や流れの制御に役立っています。 しかし、上流から河口に至る河川全体の事を考えると、多くの場合でそれらはほとんど失敗でした。

 治水のために大規模な貯水式ダムが各地に作られました。しかし、それらのダムでは、その目的に反する状況が多く発生しています。 大量に雨が降った時に、その水量のすべてを直ぐには流下させることなく、一時的にダムに貯水することによって下流域の河川の氾濫を防いでいることは間違いありません。
 しかし、それらのダムでは、貯水した水を放流する時に誤った方法が行われています。 普段はほとんど水流が無かったり僅かしか水流が無いダムの下流側に、急激な放流を行います。放流の必要が無くなれば急激な放流中止を行っています。 それらの行為が、自然に形成されていた石や岩による秩序を破壊し、秩序の再びの形成を妨げています。
 このことによって、ダムの直下の下流では不自然に川床が低下しています。 その逆に、その中流域では大量の土砂が河床に堆積することが多くなりました。

 上流に幾つものダムがある河川の中流や下流部で、今までよりも巨大な堤防建設の必要性が叫ばれていることは不思議でなりません。 そのことは、上流に幾つも建設された治水目的のダムが役に立っていない事を表わしているはずですが、誰もそのことを指摘しません。
 誤った河川工事の結果、石や岩を失い、石や岩による治水的効果を失った河川では、急激な増水と急激な減水が常態化しています。 時間を掛けてゆっくりと流下していた石や岩も容易に流下してしまうようになりました。 従来には無かったような類型の洪水被害が発生するようになり、流域の住民に被害を与え多くの生物へも悪影響を及ぼしています。

 日本中の海岸で、砂浜の多くが失われたり、失われつつあります。 その原因として、ダムによって上流からの土砂の流下量が減少したことが指摘されています。確かにその指摘は間違えてはいません。
 しかし、貯水式ダムが無い河川の河口付近であっても海岸の浸食は進んでいるのです。 砂浜にそれらの土砂を供給している河川では、昔に比べて水の流れ方が変わっています。 川の流れが急に増水して急に減水するようになってしまったのです。これは特定の河川に限った話ではありません。日本中の全ての河川がそのようになってしまいました。
 水と一緒に海へと流れ出す砂や砂利などの土砂は、海岸近くの浅い場所ににとどまる事が少なくなり、沖の深い海底に沈んでしまうことが多くなりました。
 海底にある土砂を海岸に打ち上げることの出来るのは波の力だけです。海岸で発生する波は岸辺近くの浅い海底の場所でしか発生しないのです。
 ですから、河口近くの浅い海底から砂浜に打ち上げられる土砂の量が減少して、同じく波によって移動して離れた場所の砂浜に供給される土砂の量も少なくなりました。 砂浜は侵食されるばかりです。

河川上流中流と海岸を回復させるための新たな工事方法
 私は、上流や中流の自然を取り戻し、自然の治水力を取り戻すべきであると考えています。 ただし、自然が良いから自然のままを取り戻せと言うのではありません。
 上流や中流の土砂流下の規則性あるいは法則を明らかにすることが出来たのです。 ですから、それよって、より優れた新たな自然環境を作り出そうと考えているのです。

 例えば、 コンクリート護岸が設置された上流や中流であっても、コンクリート護岸をそのままにして、石や岩が多い自然の流れを取り戻すことが可能だと考えています。 この工事方法によって多くの河川が昔のような流れを取り戻すことが出来ます。 この工事方法では治水を改善するだけでなく自然環境も取り戻すことが可能です。
 また、 河川の上流には岸辺が岸壁に覆われて川床にも岩盤が露出しているような河川があります。 そのような河川は、急激な増水が発生し易いので、それより下流の治水は困難です。 それらの河川では鉄砲水が発生しやすく、住民だけでなく多くの生物にとっても好ましい環境であるとは言えない状況です。新たな工事方法ではそのような状況の改善も可能です。

 河川の急激な増水と急激な減水の状況を短期間で解消することは出来ません。でも、それらの状況に大きな改善が無いままであっても、侵食された海岸を回復させる工事方法があります。 そのためには、先ず、河川河口の実際の状況の観察が必要です。それは、それぞれの地域に住む土地の人々にとっては容易なことです。

 この40〜50年ほどの間に誤った河川工事が多く行われたために、日本中の河川や海岸が荒廃しました。新しい工事方法はそれらを取り戻そうとするものです。 新しい河川工事の方法は、河川に自然を取り戻すだけでなく、それらの環境をより良くしようとするものです。
 しかし、自然を取り戻し改善するためには多くの時間が必要です。10年や20年で取り戻せる状況があるかもしれません。 でも、そのほとんどは、回復に100年やそれ以上の年月が必要だと考えられます。 重要なことは、その間に一貫して共通した考え方を保持しなければならない事でしょう。

 従来のような、その場その時限りの対症療法的な工事方法は止めなければなりません。 上流や中流域の河川工事の考え方は下流域のそれとは異ならなければならないのです。
 水量の増加と土砂の流下量が比例することの多い下流域では、水流に対応させる工事方法を考えることが最適の治水工事でした。
 しかし、様々な大きさの土砂が大量にある上流や中流では、水流の事だけを考えていたのでは、より良い治水工事にはなりません。 そのような誤りの結果として生じたのが、河川や海岸の荒廃でした。
 上流や中流の様々な大きさの大量の土砂は、水量の増加に比例して流下するだけではありません。様々な大きさの土砂は、それぞれの土砂の大きさごとに流下状況が異なっているのです。 新しい工事方法はそれらに対応させなければなりません。
 河川の工事は、河川のそれぞれの場所における最適の治水方法であるだけでなく、河川の上流から下流に至る全ての場所の水の流下と土砂の流下を考慮した治水工事でなければならないでしょう。

 以下に記述している新しい工事方法は、それらに対応出来るようにと考えました。もちろん、それらだけで全てが解決する訳ではありません。 多くの皆さんに考えて頂かなければならないことがまだまだ多くあります。
 現実に発生している状況をより詳細に観察して、さらにより良い治水方法を開発する必要があります。

新しい工事方法
 私が提案している新しい工事方法は、その何れもが比較的に容易な方法であると考えています。 また、それに要する費用も比較的に安価だと思います。そして、従来から使用されてきた技術をそのまま利用できます。
 ただし、それらの工事はその仕様の詳細を決定するのに、現場での観察力と経験に基づいた知識を必要とする場合が多いと考えられます。 従来のように、現場から離れた場所で工事の詳細を決定すれば不具合が多くなると思います。
 河川の上流から下流に至る状況と、それぞれの場所での異なった状況に対する綿密な観察と洞察力が必要です。

 以下に、私が考えた新たな工事方法を紹介します。もちろん、私が考案した方法以外でも、失われた自然を取り戻す方法は可能だと思います。 現場で実際に工事に携わる方々や研究者の皆様による新しい工事方法の開発を強く望んでいます。

 新しい工事方法の説明のみでは、それらが根拠としている考え方を説明しきれないと考えています。ですから、WEB上の幾つかの論述をお読み下さるようお願い致します。
 それらの論述では、 新しい工事方法がその根拠としている上流中流の土砂流下の様々な現象あるいはその規則性を説明しています。 また、いわゆる漂砂よって形成された砂浜海岸で発生している実際の現象についても詳しく説明して います。
 なお、各工事方法の詳細はそれぞれ個別に記述していますのでそちらを御参照下さい。

(1)「植生の回復を早める治山ダム」
 河川の最上流に設置する砂防堰堤で、崩壊斜面があり、降雨時にのみ水流が発生する谷間へのダムの方法です。
 このダムによって、今までは、長い期間を掛けても容易ではなかった崩壊斜面とその谷間への植生の回復期間を短縮することが出来ます。
 *詳細は冒頭の小見出しをクリックして下さい。

(2)「コンクリート護岸に自然の岸辺を取り戻す工事方法」
「コンクリート護岸に自然の岸辺を取り戻す工事方法(1)概要」
「コンクリート護岸に自然の岸辺を取り戻す工事方法(3)写真」
 大きな石や岩を失ったコンクリート護岸の岸辺に、石や岩を取り戻す方法です。また、コンクリート護岸の無い場所にも有効な護岸方法です。
 例えば、山腹の崩壊などにより岸辺の土砂がむき出しになっている場所でも、流水による侵食を防ぎ。同時に、山腹の土砂崩壊の進行を止めることも可能です。
 岸辺に石や岩を取り戻すことにより、流れの全体に、より良い「自然の敷石」状態と「自然の石組」状態を取り戻します。
 以前掲載していた 「コンクリート護岸に自然の岸辺を取り戻す工事方法(2)詳細」は、その内容が「河川上流中流の土砂流下と堆積の規則性を考える」とほとんど重複していますので、掲載を取りやめました。

(3)「石や岩の少ない河川でそれらの流下を押しとどめる方法」
 川床や岸辺に残された数少ない石や岩に人工的な加工を加え、自然の石組状態を取り戻します。 それをもとに、流下してきた石や岩による自然の石組状態や自然の敷石状態を増大させます。
 石や岩の持ち出しや堤防や護岸の建設などによって、河川敷から多くの石や岩が失われた上流や中流に用います。 また、岩盤などによって元々大きな石や岩が少ない河川上流でも可能な方法です。
 *詳細は冒頭の小見出しをクリックして下さい。

(4)「杭や柱を設置することにより土砂の流下を促進させる方法」
 大きな石や岩が、周囲の土砂の流下を促進する現象を利用した新たな方法です。 波による作用で閉塞してしまう河川の河口に設置すれば、渚で発生している海岸線方向への土砂移動を妨げることなく、河口への土砂堆積を防ぎます。
 中流や下流で川床に土砂が堆積し易い状況にも適応出来ます。
 *詳細は冒頭の小見出しをクリックして下さい。

(5)「河口の水底に水制を設置して失われた海岸を回復させる方法」
 急激な増水と急激な減水により、河口から離れた海底深くに堆積してしまう土砂を、岸辺近くの海底に誘導する方法です。河口の水底に設置します。
 これによって、海岸線方向へと移動する土砂の量を増大させ、侵食された海岸を回復させます。設置前に河川と河口と海岸の綿密な観察が必要です。
 *詳細は冒頭の小見出しをクリックして下さい。

(6)「既設の砂防堰堤を改良する方法」
 常に水流がある場所で、既に設置されている砂防堰堤を改良する方法です。 降雨時にのみ水流が発生する場所の堰堤については、「河川上流中流と海岸を回復させるための新たな工事方法」(1)で説明しています。そちらをご参照ください。
改良の必要があるのは堰堤の上端の大部分が水平であるものです。また、スリット式の堰堤でも改良が好ましい場合もあります。
 この改良工事方法は極めて容易であり安価でもあります。ただし、その詳細の決定と施工には、堰堤の上流部と下流部の観察と考察が必要です。
 *詳細は冒頭の小見出しをクリックして下さい。

(7)「貯水式ダムの放流方法の改善」
 ここでは、貯水式ダムの放流方法をどのように改善するべきかを記述しています。
 第15章「貯水式ダムの放流を考える」でダムの放流方法が間違えている事を指摘しましたが、その改善方法について詳しく記述することはありませんでした。 ここでは、どうしたらそれを改善出来るのかを具体的に説明しています。
 また、第15章では記述しきれなかった事柄についても少し言及しています。

 ここで論述しているのは、治水をその目的に掲げる河川上流の貯水式のダムについてですが、 上流域ではない場所の貯水式ダムにおいても参考にして頂ける事柄があると思います。

 「貯水式ダムの放流方法の改善」では新たな工事方法を提案していません。
 貯水式ダムの放流方法の改善には、新たな工事を施工する必要はほとんど無いと考えています。 ただ、放流に関する考え方を改めてダムの運営方法や設備や装置の操作方法を変更する必要があると考えられるので、 そのための施設や装置の改善が必要になることがあるかもしれません。
 なお、それらの記述をお読みになる前に、 第15章「貯水式ダムの放流を考える」を必ずお読み頂けるようお願い致します。 それでなければ、記述されている改善方法が意図するところが理解できないと思われます。

工事方法と特許の無料使用
 上述した工事方法のうちで、2つは特許が認められています。 しかし、その工事方法は工事実績が全くありません。ですから、それらの工事方法の実際の効果を確かめる必要があると考えています。 また、それらの工事方法について、現時点(2018年8月1日)では、特許の使用料を請求することは考えていません。
 特許に間違いなく効果があり、特許料を請求することが妥当であると考えた場合には、特許の使用料を請求することを予定しています。
 新しい工事方法のうち(5)「河口の水底に水制を設置して、失われた海岸を回復させる方法」に記載した「特許5527824号」については、特許使用の際にはその旨をご連絡ください。 ご連絡がなかった場合には特許の無断使用となり、損害賠償の対象となり得るのでご注意ください。
 場所、日時、工事担当会社、担当責任者、連絡方法などを事前にメールにて、ご連絡下さるだけで構いません。
  この機会に多くの皆様に上述の工事方法の効果を確かめて頂けるのではないかと考えています。  

 無料使用の期間が終了した場合においては、私のHPにその旨を掲載致します。
 その他、不明がありましたら遠慮なくお問い合わせ下さい。

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