>(4)「杭や柱を設置することにより、土砂の流下を促進させる方法」
2019年8月1日一部変更、2017年7月19日一部変更
2015年12月11日一部変更 2015年8月20日掲載
(4)「杭や柱を設置することにより、土砂の流下を促進させる方法」
(イ)新しい工事方法の根拠とその効果
水流によって流下する土砂は、小さな土砂ほど流下し易く、大きな土砂ほど流下し難くいのです。これが、河川における土砂流下の大原則であり最も重要な法則です。
でも、様々な大きさの石や岩が数多くある河川の上流部や中流部では、これ以外の土砂流下現象も発生しています。
水流中にある大きな石や岩は、その周囲にある、それらより小さな土砂の流下を促進しています。
これによって、河川では特別の状況が発生しています。上流の岸壁による地形や、コンクリート護岸による地形や、淵の地形は、これによって形成されています。
また場所によっては、河川にある橋脚の基部が侵食されることもあります。
新しい工事方法は、この現象を利用しています。流れの中に杭や柱を列柱状に連続して設置します。 これによって杭や柱を設置した場所はその周囲の土砂が流下し易くなります。
この考え方については、
「河川上流中流の土砂流下と堆積の規則性を考える」の第1章、第4章において詳しい説明をしていますのでそちらをお読みください。
この工事方法が多く適用できるのは、中流や下流の土砂が堆積し易い場所で、堆積土砂を減少させる必要がある場所です。
また、土砂によって河口が閉塞する河川の河口には極めて有効な方法であると考えています。
(ロ)新しい工事方法の河口への適用
大きな河川や中規模の河川ではそのようなことはありませんが、水量が少ない小河川では、その河口が砂などの土砂によって埋まってしまう事があります。
雨後などで水量が多いときには、河口にある砂などの土砂は水流が海へと流してしまいます。
しかし 、渇水時など、水量が少なかったりほとんど無くなってしまうようになると、海から打ち上げられる砂などの土砂が堆積して河口を塞ぎます。
このような時に、思いがけない増水があったりすると、河口まで下って来た水の行き場が無くなり、急に増加した水流が下流域にあふれます。
このような事態を防ぐために、河口岸辺の片側や両側から海に向かって、導流堤が築かれている事が多くあります。
ところが、河口から海に向かう導流堤には困った副作用があります。
土砂によって塞がれてしまう河口のほとんどは、砂などの土砂が堆積した砂浜に面しています。
それら浜辺にある砂などの土砂は、もっと大きな河川の河口等から海岸線に沿って移動して来たものです。
あるいは、土砂の供給元が河口を塞がれてしまった河川そのものだったりすることもあるのです。
浜辺の土砂を海岸線に沿って移動させているのは、海から浜へと打ち上げている波の力です。
海から浜辺へと打ち寄せる波は、その時々の気象条件によって、その打ち上げる方向が僅かづつ異なっています。
打ち寄せる波の方向が、陸に向かって真っ直ぐではなく、海岸線のどちらかの方向に偏っているときに、
岸辺近くの海底にあった土砂や波打ち際にあった土砂が、海岸線に沿って移動します。
海岸線に沿って移動する土砂は、その時々の気象条件によって、浜辺を長い距離に亘って移動したり 、ほとんど移動しなかったりもします。
しかし、年間などの長い期間を考えれば、その移動方向はほとんど一定です。
常に浜辺へと打ち上げている波が、土砂を最も多く移動させているのは波打ち際です。
土砂が最も多く移動しているのは、波が打ち上げられ引き戻されている渚と、そこに隣接する浅い海底なのです。
河口に設置された導流堤は、上述の土砂の移動作用を妨げてしまいます。実際、導流堤の設置後に、河口の左右どちらかの浜辺が侵食されてしまう例が多くの河口で見られます。 波の力によって移動する土砂の移動を、導流堤が妨げているのです。
新しい工事方法によって、杭あるいは柱を列柱状にして河口に設置固定した場合では、河口に土砂が堆積して河口を塞ぐことを防ぐと共に、波による土砂の移動を妨げる事が少なくなります。
(ハ)工事の具体的方法
河口から流れ出る水量が多いときには、列柱状の柱が連続している付近の河床が流れの中で最も深くなり、水と土砂が海へと流れ出します。
河川の水量が減少して来ても、柱を連続して設置した場所は、柱が無いときに比べて深くなっていますから、柱が無いときに比べて、より海に近い位置まで水流が流れ出します。
河川の水量が極めて少なくなった時でも、柱を設置した場所には深くなった地形がそのまま残ります。
河川の水量が減少すれば、河川の水流が土砂を流下させる作用よりも、波が土砂を浜辺に打ち上げる作用のほうが強くなる機会が増えます。
その時でも、間隔を開けて列柱状に連続させた柱の場所に打ち上げられた土砂は、柱が無い時に比べて、波と共に海へと流れ下る割合が多くなります。
打ち上げられた海水が海に戻る時に、連続した柱があることによって土砂が海へと流下することが促進されるからです。
したがって、河口の上流側から続く、連続して柱を設置した場所が深くなる状況は維持されます。つまり、それだけ河口の水は海へ向かって排出され易くなります。
仮に、列柱状に柱を連続して設置したにも関わらず、河口が土砂によって塞がれてしまった場合であっても、柱を設置した場所は谷間状に深くなっていますから、 河川の水と海水とは繋がり易くなります。河川の流れが全く流れ出さなくなる機会は少なくなるでしょう。
土砂を海岸線に沿って移動させる波が発生した時でも、海側に連続して設置された柱は、その間隔が開けてありますから、移動する土砂は柱と柱の間を通過していきます。
移動する土砂は斜めや横方向に打ち上げられる波によって、波打ち際を移動するのですから、間隔を開けて連続して設置した柱はその移動を妨げる事が多くありません。
また、列柱状に柱を設置する場所は、土砂の堆積している河口に限られますから、従来の導流堤のように海底にまで延長させる必要がありません。
当然、岸辺近くの浅い海底での土砂の移動を妨げることはありません。
間隔を開けて列柱状に連続した柱を河口の海側に設置した場合では、海岸線に沿って波打ち際を移動する土砂の移動を妨げる事が少なくなります。
もちろん連続する柱の間隔を広げる程、土砂の移動を妨げる事が少なくなりますから、柱の設置に関する工夫の余地は大きいといえます。
また、それらの柱の設置やその設置の変更やその撤去は、導流堤の場合に比べて、はるかに容易なことは言うまでもありません。
(ニ)新しい工事方法と海岸線を移動する土砂
この工事方法は、砂浜や砂礫浜を形成する土砂について、従来には無かった新しい考え方を前提にしています。
その詳細はHPにおいて詳しく記述していますので、まず先にそれらをお読みになることをお勧めします。
「河川上流中流の土砂流下と堆積の規則性を考える」の第6章
別冊 安倍川河口から続く静岡の砂礫浜海岸(その1)
別冊 安倍川河口から続く静岡の砂礫浜海岸(その2)
別冊 安倍川河口から続く静岡の砂礫浜海岸(その3)
(ホ)新しい工事方法の特許について
この工事方法は特許を出願しましたが、残念なことに特許は認められませんでした。
この新たな工事方法の特許出願書類は、公開特許公報(A)特開2011−89250として公開されています。
具体的工事方法はその記載も参考にして下さい。
また、特許審査の際の請求項の記載は、上述の(公開特許公報(A)特開2011−89250)とは異なっていますので、下に引用してあるその請求項も参考にして下さい。
【請求項1】
水の流れの中に、硬質な資材からなる杭や柱による列柱状の構造物を、
流れの方向に沿って設置、固定することを特徴とする、土砂の流下を促進させる方法。
(ヘ)公開特許公報の表示方法
(1)独立行政法人 工業所有権情報・研修館のトップページを開いて下さい。
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/web/all/top/BTmTopPage
(2)特許情報プラットホームのページが表示されますから、左上の「特許・実用新案」にポインターを移動させて「1.特許・実用新案番号照会」をクリックして下さい。
(3)「1.特許・実用新案番号照会」のページを開いたら、 文献番号の「種別」に「公開・公表特許公報(A)」を選択して、「番号」に 2011-89250 を入力して「照会」をクリックして下さい。
(4)「照会結果一覧」に 公開番号 特開2011-89250 が表示されますから、それをクリックして下さい。
(5)特開2011-89250が表示されますから、左上の「PDF表示」にしてPDFの各頁を見るか、あるいは右側の「文献単位PDF表示」を選択してください。 「文献単位PDF表示」の場合、新たな画面で表示された認証用番号を送信して、PDF画面を表示させてください。PDF画面から印刷が可能になります。
>(4)「杭や柱を設置することにより、土砂の流下を促進させる方法」