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乳母なりし人、今は何につけてか、など泣く泣くもとありける所に帰りわたるに、
ふるさとにかくこそ人は帰りけれあはれいかなる別れなりけむ
昔の形見にはいかでとなむ思ふ、など書きて、硯の水の凍れば皆とぢられてとどめつ、と言ひたるに、
かき流すあとはつららにとぢてけりなにを忘れぬ形見とか見む
と言ひやりたる返りごとに、
慰さむるかたもなぎさの浜千鳥なにかうき世にあともとどめむ
この乳母、墓所見て、泣く泣く帰りたりし。
昇りけむ野辺は煙もなかりけむいづこをはかとたづねてか見し
これを聞きて、継母なりし人、
そこはかと知りてゆかねど先に立つなみだぞ道のしるべなりける
かばねたづぬる宮、おこせたりし人、
住みなれぬ野辺の笹原あとはかもなくなくいかにたづねわびけむ
これを見て、兄人は、その夜おくりに行きたりしかば、
見しままに燃えし煙は尽きにしをいかがたづねし野辺の笹原
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