夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if-
作:ブタベストさま
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 夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 0  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 1  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 2  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 3  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 4  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 5  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 6  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Intermission  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 7  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 8  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Extra Episode
side Sayaka  いつからだろう?  弟だと思ってた、大事な家族だと思ってた。はずなのに・・・  気づくと目で追ってしまう私がいる。 「お姉ちゃん、これからずっと一緒にいるの?」 「うん、そうよ。」 「わぁい、これからずっと一緒だっ!」 「こら、達哉。一緒にいてくれるからって甘えちゃ駄目だぞ?」 「はぁい、お父さん。」 「でも麻衣は甘えて良いぞ」 「うん!」 「あー、麻衣だけずるい」 「達哉は男の子だからな、甘えるんじゃなくて守ってやるくらい  じゃないとな」 「うん、わかった。お姉ちゃんも麻衣もお母さんも僕が守る」 「あら、私はいいのよ? 私はお父さんが守ってくれるから」 「そう? じゃぁお母さんはお父さんにお願いする」  見ているだけで涙が出そうになる、私が求めた家族がここにある。  私はこの中に入っていけるのだろうか?  このときの私はきっと私は不安な顔をしていたと思う。  そのとき琴子さんが微笑んで達哉君達を呼んでこう話した。 「達哉、さやかお姉ちゃんが一緒にいてくれると嬉しい?」 「うん、嬉しいよ。僕お姉ちゃんのこと好きだから」 「私もお姉ちゃんが大好き!」  こんな私を好きと言ってくれた、達哉君と麻衣ちゃんの目を今でも覚えてる。  家庭が崩壊しかけている私を救ってくれたのは千春さんと琴子さんだった。  けど、本当に救ってくれたのは達哉君と麻衣ちゃんだったのかもしれない。  私はこのとき、達哉君と麻衣ちゃんの良いお姉ちゃんになることを誓った。  はずだったのに・・・ side Mai  いつからだろう?  お兄ちゃんを、兄妹であるはずなのに・・・  気づいてしまったのはいつだったのだろう? 「これからおまえの妹になる麻衣だ」 「麻衣ちゃん?」 「・・・」 「僕の名前は朝霧達哉、今日からお兄ちゃんになります!」 「おにい・・・ちゃん?」 「そうだよ、麻衣ちゃん」 「お兄ちゃん・・・」 「達哉、ちゃんはつけなくていいんだぞ? おまえの妹なんだから」 「うん、なら・・・麻衣」 「・・・お兄ちゃん」 「麻衣、もし達哉がいじめたら遠慮なくお父さんに報告するんだぞ?」 「お父さん、僕は麻衣をいじめないよ。」 「そうか? ならずっと仲良しでいられるか?」 「うん、麻衣とずっと一緒にいる!」  一瞬にしてすべてを失った私は、このとき私のすべてを得たのだと思う。  思えばこのときからお兄ちゃんに恋してたのだと思う。  だけどそのことに気づくわけもなく・・・ 「ずっと仲の良い兄妹でいよう」  というお兄ちゃんの言葉が嬉しくて、そうしようと幼心に誓ってしまった。  その誓いが、今の私を苦しめる事になるなんて、思いもしなかった。  大好きなお姉ちゃんが家族に加わって、私とお兄ちゃんはお姉ちゃんと  一緒に遊ぶようになって、このとき私はお姉ちゃんに嫉妬したのだと思う。  お兄ちゃんとの時間をとらないで欲しいって。  それでも、お姉ちゃんは好きだったし、それに私はお姉ちゃんの家族の  事を知ってしまっていたから、何も言えなかった・・・  私はたぶん、このときから少しずつ壊れていったのだと思う・・・ side Sayaka  千春さんが失踪した。  ふらっとどこかに行くことはあったけど、何日も帰ってこなくて連絡も取れず  警察は失踪事件として調査を始めた。  麻衣ちゃんは琴子さんに泣きつき、達哉君は毎日外を走り回って千春さんを  探していた。  私はというと・・・泣きじゃくる麻衣ちゃんを優しい微笑みで抱いている  琴子さんを見て、納得してしまった。  琴子さんはこうなることを覚悟していたのだと思う。  自分と別れることになっても、千春さんには夢を追い続けて欲しいと  思っているだろうから。  千春さんと琴子さんの愛の形は、本当に信頼しあっているからこその形だと  思える、それは私にとってうらやましくもまぶしい物だった。  ただ・・・  毎日外を駆け回って千春さんを探している達哉君が不憫でならなかった。  麻衣ちゃんは琴子さんが受け止めてくれてるのに、達哉君は琴子さんに頼らず  自分自身で千春さんを捜そうとしている。  千春さんに甘えたいのかもしれない。  だから、私は達哉君を抱きしめてあげる。  慰めることは出来ないけど、ただ一つの思いを込めて抱きしめる。  達哉君、達哉君には私がいるから、守ってあげるからね。  このとき私は可哀想という気持ちより愛おしさを持ってた・・・ side Mai  学校での授業中、先生に呼び出された私は話を聞いて倒れそうになった。  すぐに駆けつけた病室にはお兄ちゃんがすでに来ていた。  ベットの上に眠るお母さんは穏やかな顔をしていた。  ただ周りの医師や看護婦やあわただしく動いているだけだった。  ベットの上だけ時間が止まってしまっているように見えた。  私はもう、お母さんと話すことが出来ないって、このとき思ってしまった。 「・・・」  医師が何かを言ったみたいだったけど、私は聞こえなかった。  そのときお兄ちゃんが後ろからそっとふるえる手で抱きしめてくれた。  私はそのとき、何が起きたかはっきりと理解してしまった。 「お兄ちゃん・・・お兄ちゃん!!」  私はお兄ちゃんの胸の中で泣くことしか出来なかった。  その後のことは良く覚えてない。  お姉ちゃんが帰ってきてくれて、左門さんと共同でいろいろと手伝ってくれて  気がつくとお家にお兄ちゃんと二人っきりになっていた。  私は両親を2度も失ってしまった。 「大丈夫、麻衣。俺はどこにも行かないから」  失う怖さに怯えていた私を救ってくれたのはお兄ちゃんだった。 「だから、麻衣もどこにも行かないでくれ」 「うん。私はずっとお兄ちゃんのそばにいるから・・・」  お兄ちゃんと私は泣きながら抱き合った。  このときの私は誓いという鎖に自ら絡められていた。  そして転機が訪れる・・・  夜明け前より瑠璃色な Another Short Story -if- Episode 0.0「プロローグ」
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