食生活と虫歯
キシリトールと虫歯
キシリトールとは
ブドウ糖、麦芽糖などに水素を加えて還元したものを一般的に糖アルコールといいます。キシリトールもその一種で、工業的にはシラカバや樫などの樹木から得られるキシランを還元して製造されます。糖アルコールの中では最も甘く、砂糖と同じと言われています。また溶解時に吸熱反応(砂糖の8倍)が起こるので口の中で冷涼感が得られるのも一つの特徴です。
虫歯抑制できるか
キシリトールによるmutans streptococciの静菌作用について
キシリトールはホスホエノールピルビン酸依存性ホスホトランスフェラーゼ系によって取り込まれ、キシリトール5リン酸となるがmutans streptococciはそれを代謝することができないために菌体内蓄積し、増殖を抑制することが報告されています。(Trahan.1985.Caries Res.)しかしキシリトール存在下で継代培養されたmutans streptococciはグルコースを糖源とした増殖阻害に耐性を持つようになり、効果がなくなるといわれています。(Gautheier,L 1984 .Caries Res.) 実際、口腔内においてキシリトール入りのガムを長期間食べ続けるとmutans streptococciの数が減るとの報告があります。これはキシリトールの静菌作用というよりは、キシリトールが歯垢pHを下げないため、歯垢の中での最近勢力が耐酸性の強いmutans streptococciより他の最近の方が優勢になってくるため、数が減るのではないかと考えられています。つまりキシリートールが抗生物質が細菌を減らすように実際口腔内で積極的にmutans streptococciの数を減らしているとは考えにくいようです。
キシリトールには酸産生能がない
細菌内に取り込まれたキシリトールは細胞内でリン酸化されてキシリトール5リン酸になりますが、これは酸には変わりません。このことは虫歯をつくらない代用糖の重要な条件ですが、これはキシリトールに限った話ではなくほかの糖アルコールにも言えることです。
再石灰化を促進するといわれていますが。
歯を構成するハイドロオキシアパタイトの結晶からカルシウムなどのミネラル成分が溶け出して結晶構造が崩れる現象を脱灰といいます。一度脱灰がおきても中性環境では唾液中のリン酸やカルシウムがそこに沈着して結晶のミネラル成分が回復します。この現象を再石灰化と呼びます。キシリトールを含むガムを噛むと再石灰化が促進されるとの報告があります。しかしこの作用はキシリトールに限ったことではなく糖アルコール全般についていえることです。これはキシリトールの作用というよりは、ガムを咬むことにより唾液の分泌が促進されて歯垢のpHが上昇して、再石灰化が促進されたのではないかと考えられています。*
*は日本トゥースフレンドリー協会の会員向けに発行された”キシリトールの「うそ」と「ほんと」”(東北大学歯学部 山田 正 氏)より引用しました。