Travel_6
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そのにじゅう (長文) |
もう海外も随分なれたころのお話。 かなり旅慣れてきて、1人で行く出張が多く、その時もそうだった。 鞄は出張が2週間までならスーツケースを使わない。 飛行機に乗るときに預けるのが面倒だし、ピックアップするのに時間がかかるのがイヤだから。最初の頃の様にスーツを着て飛行機に乗ったりしない。 窮屈でゆっくり寝ることができないから。 そして、空港にはできるだけ早く行って、通路側をリクエストする。 降りるときに楽だから。 フェニックスからロスまで約1時間。 ロス発大阪行きは午後一番。 フェニクス発は午前9時、 何故か国際線に乗り継ぐ場合は国内線なのに2時間前には空港に来いと航空会社の人は言う。 実際には1時間前でも全然問題ないけど。 でも、どちらかと言えば慎重派の僕は、その日も7時には空港に着いていた。 そしていつもの通り、通路側をリクエスト。 服はとっても楽なスポーツウエア。 勿論、チェックインする荷物は無し。 よし。 俺もいっぱしの国際派ビジネスマンだ と心の中で呟いた。 もう、何度と無く、同じフライトを使っている。 だから、いつもの通り、いつものゲートへ。 まだ、誰も来ていない。 そりゃそうさ。 国内線乗るのに2時間も前から来るやつはいないよ。 それもこんなに朝早く。 そんなことを思いながら、いつしかウトウトしていた。 気がつくと、8時過ぎ、少しずつ人が増えてきている。 まだ、かなり時間がある。 フェニックス−ロスはシャトルと言って飛行機でありながら、まるでバスの様な感覚で、到着して人を降ろすとまた、すぐに乗せて飛んでいくっていう感じだ。 だから、9時発なら8時45分以降に乗せ始める。 おまけに5分、10分の遅れは日常茶飯事である。 また、知らぬ間にウトウトしていた。 朝5時起きだから無理もない。 ふっと目が覚めた、時計を見ると 9時5分前だ。 でも、まだ、コールがない。 ま、遅れることはよくあることだ。 もう少し待とう。 この時、僕には何も疑う気持ちがなかった。 繰り返していうが5分、10分の遅れは本当によくあることだから。 9時 9時5分 この時間になって、もしや、まさか という気持ちが沸いてきた。 次の瞬間、飛び跳ねるように椅子から立ち上がり、丁度、椅子の裏側にあった、表示番をみた。 "!" 声がでなかった。 行き先表示は "デンバー"だ。 このときばかりはチェックインしていないことが仇になったとても重たい鞄を二つ持ち上げて走った、 隣のゲートだ。 今日はゲートが変わっていたのだ。 そういえば、今の今まで何にも確認しなかった。 チケットも見ていなければ、表示も見ていない。全ていつもと同じと信じ込んでいたから。 "!" 声がでなかった。 乗るべき飛行機は既にゲートを離れて動き始めていた。 喉ががカラカラだ。 頭の中は真っ白になっていた。 それでも、何とかカウンターにいたおじさんに訴えた。 なんと言ったか思い出せないが、きっと "あれに乗せてくれ"って言ったんだと思う。"そら あかんわ。"と大阪弁の柔らかい感じではなく、冷たく"無理だね。" って言われたような感じの言葉を聞いた様な気がする。いったんゲートを離れた飛行機が戻って来てくれるはずはない。 しかし、そのおじさんはいい人だった。 "今からなら 隣のターミナルのデルタの次の便に乗ればロス発の国際線に間に合うから、行って見なさい。 ただ、その前にこのターミナルのUAのメインカウンターで相談してみなさい。"って言ってくれた。 メインカウンターに着いた時にはもう喉はカラカラなんてもんじゃなくて唾もでない状態になった。 パニックになっていた。 でも、とにかく、落ち着いて事情を話すと、カウンターのおじさんはひげをさわったり、眉をしかめたりしながらキーボードを叩き始めた。 "You are Lucky." 間違いなくそう言った。 フェニックス−サンフランシスコ−関空の席が空いているというのだ。 "ほんまやったら、1日待たんとあかんとこやけど おまえはついてるなー。"っていうようなことを英語で言ってくれた。 ほんまにラッキーだった。 ここまでは。 ********************** 今度はちゃんとチケットもカウンターの表示も確かめて、ゲートで待った。 間違いなくサンフランシスコ便だ。 勿論ウトウトもしなかった。 が、いやーな予感がした。 飛行機が遅れているって言うのだ。 実は サンフランシスコでの乗り換え時間が40分しかないので、このチケットは日本では発券してもらえなかったのである。通常国内線から国際線への乗り継ぎは50分以上ないと発券しないらしい。 ただ、今回は事情が事情なので発券してくれたのだ。 ま、しかし、何とか20分遅れで出発した。 これなら、十分間に合う。 サンフランシスコ空港の地図は完全に頭に入っている。 ダッシュすれば5分もあれば十分だ。 が、天候が非常に悪く、さらに遅れそうな感じだ。 おまけに僕の席は後ろの方だったので、降りるのにも時間がかかる。 もう、気が気でなかった。 一難去ってまた一難である。 普通ならこういうとき、航空会社に腹たてるもんだ。 よくも遅れやがってっていう感じで。 でも、その日は違った。 ここまでやってくれたんだからあともうちょっと何とかしてってすがるような気持ちだった。 着陸寸前には乗り継ぎの時間があまり無い人を優先的に降ろすよう機内アナウンスがあった。 しかし、その優先される便の中に関空行きは含まれていない。 時計を見ると離陸時間まであと2分しかなかった。 走った、走った 重たい鞄を持ち上げて。 喉はカラカラ。 頭は真っ白。 途中、荷物検査を横入りしてお兄ちゃんに怒られたが、時間がないからと言って入れてもらった。 また、走った。 "!" ぼ、僕の乗るべき飛行機は…・・。 よかった。 まだ、いる。 天候不順で20分遅れ。 ああ、 これで無事に帰れる。 |