Travel_5
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そのじゅうきゅー  (長文)
えっと、あれは何回目の海外だったか。そろそろ、アメリカにも慣れてきたっていう感じのころ。サンフランシスコとロサンゼルスの丁度、真ん中に位置する小さな町の大学に行くことになったんだけど、さーてどうしたものか。 中途半端なんだなー、この場所。 地図で調べたら空港があるし、まだ、レンタカー借りるほど度胸もついてなかったし、結局飛行機で行くことにした。

他の仕事を終えてサンフランシスコの空港ホテルに他の荷物をおいて日帰りで行く予定、つまり、翌日には帰国というスケジュールを組んでいた。

さーて、と飛行機は・・・・。 20人も乗れないような小型飛行機。もちプロペラ。 でも、ひるまなかった。 既に何回か海外渡航を経験していし、シンガポール−マレーシア間でこの手の飛行機は経験済みだから。

離陸後40−50分くらいで到着の予定で、飛行機も確かに高度をどんどん下げてるんだけど、どこにも空港らしいものは見えない。 はーて一体どこに降りるんだろう・・・ まさか、あの原っぱみたいなところ? 果たして、飛行機はその原っぱ見たいなところ、空港に着陸した。

ここから大学まで一体どうやって行けばいいのか、回りには何もないからきっと歩いては無理だろうな。 タクシー。 でも、タクシーって並んでないし、どうやって呼ぶんだろう。 空港(っていっても小さな田舎のJRの駅ぐらい)中探すと、ちゃんと専用の電話があるじゃないの。 でも、電話嫌いなんだよな。 通じないもんね。 得意のジェスチャーが使えないし。 でも、それしかないわけだからとりあえずトライ。 で、案の定、通じないんだなー、これが。 とにかく 相手が何を言おうと"I'm calling from the airport. I'm a Japanese man. It's easy to find me."と連呼して、電話を切って待つこと30分以上、やっと1台来てくれた。 後は行き先の大学と学部の名前を告げて、連れて行ってもらえばOK。

で、ここで冷静になって考えたんだなあ。 帰りはどうしよう。 そこで その気だてのよさそうなタクシーの運ちゃんに 帰りに迎えに来てよってお願いして 時間と場所を約束したんだ。 何とか英語も通じてほっとした。 この町には2台しかタクシーないっていうのも聞き取れたし。 俺って冴えてるな。 だてに何度も海外出張をしてるわけじゃないんだなんてしっかり自己満足してた。

大学の先生とのお話はスムーズに済んだ(本当はとてもスムーズとは言えない、なんてったて会話が英語だから。 今から考えると良く通じたなーって感じかな)んで、約束の5時まで時間つぶしに生協みたいなお店みたりしてた。 確かフライトは6時過ぎで、飛行場までは20−30分くらいかかったように記憶している。 だから、約束を5時にしたんだと思う。

で、お約束の場所で待っていた。
5時 タクシーは来ない。 ま、少しくらい遅れるかな。
5時10分 やっぱり来ない。 まだ、大丈夫。
5時15分 あれー。 ってことで先生に助けを求めようと戻ってみると
      もう帰ったあと。
5時20分 ・・・・・
5時25分 ・・・・・ 時間だけが過ぎていく、まずい。
      こんなところで取り残されたら、泊まるところもわからんし、
      おまけに、荷物はサンフランシスコのホテルにあるし、
      明日のフライトで帰国の予定やし。
5時30分 あと10分以内に来なかったらやばいぞ、っと思ったやいなや、
      いつの間にか俺の足は大学の駐車場へ向かってた。
次にこの駐車場に来た人に空港まで送ってもらえるよう頼んでみよう。 その時既に頭の中にはそれしか思い浮かばなかった。 着た、40−50歳くらいのおばさんだ。 おばちゃんと言わないのは そう言わせない気品をもった人だったから。 それより、とにかく、 "Ex, Ex, Excuse me. Could you take me to the air air airport. Taxi Taxi, does not come." およそ、まともな英語でなかったのは確か。 おばさんにしたら ぶしつけにわけのわからん背広着た東洋人が血相かえてなんか おまえの車に乗せろって言っているわけだから、びびったに違いない。 "No, I can't." 当たり前の返事。 それでも執拗に俺は食い下がった。 ここで諦めたら路頭に迷う。 ついにおばさんはOKしてくれた。 言葉では伝わり切れない悲壮感が伝わったんだと思う。 ありがたや ありがたや。

ばかでかい大学の敷地内を5分くらい走ると、正面から見覚えのある 車が来るのが見えた。 なんて叫んだが覚えていないが、あれだって説明した。 おばさんはほっとした様子で、車を停めてくれた。

俺がそのタクシーに乗り換えて空港に向かったのは言うまでもない。運ちゃん曰く、遠くまでの客を乗せたんで来るのが遅れたって。 そんなことどうでもよかった。 飛行機に間に合いさえすれば。 ぐちゃぐちゃいっとらんでもっと飛ばせと心の中で言った。 離陸20分前ぐらいには空港に着いた。 助かった。 ただ、今になって本当に心残りなのは 気が動転していてあのやさしいおばさんの連絡先聞き忘れたことだな。 おばさん どうもありがとう。