ただ日記 Feb. 1999

1999 / Jan.|Feb.|Mar.Apr.May.Jun.
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99/02/01 (Mon.)

 朝日新聞の家庭面、日曜日に「きほんのき」というコーナーがある。みんな何となくやっているけど、実際のところどうするのがよいか、その道のベテランにノウハウを伺うというもの。部屋の掃除、ボタンつけ、ひげそり、洗髪、スナップ写真、スケジュール管理などなど(こうして挙げてみると、自分の興味の傾向が如実にうかがえて恥ずかしい)。昨日はなーんと「愛の告白」なのだったー。ちなみにベテランさんは俵万智。そうか、そんなネタもありなのか。じゃあ、といろいろ考えてみた。
 歩き方。走り方。爪の切り方。耳かき。草むしり。お茶の立て方。Webサイトの運営。ファイルの管理。コンピュータのキーボード(習得篇と活用篇)。パソコン選び。猫と遊ぶ。犬と遊ぶ。本の読み方。辞書の引き方。新聞の読み方。宝くじの買い方。馬券の買い方。車券の買い方。鼻のほり方。尻の拭き方。テレビの見方。嘘のつき方。たばこの吸い方。吸いがらの捨て方。きせる乗車。ハッキング。ねずみ講。詐欺。横領。贈賄。収賄。殺人。死体遺棄。自殺。
 ところで『シビライゼーション2』である。実は昨年末にプレイステーション版『シヴィライゼーションII』が出たばかりらしい。なんだ、じゃあ今さらな話題というわけでもないようだ。どんなものかと、近場のファミコンショップへ行ってみる。売り切れ!人気があるのか入荷数が少ないのか。
 『シビライゼーション2』の妙な面白さはなにかと考えるに、適当にやっていてもそこそこ遊べて、その上で知識欲をくすぐるというか、どうやらちゃんとやればいろいろ有利に進むらしいと思わせるパラメータをちりばめていることではないかと考えた。現実を大胆かつユーモアを持って抽象化するセンス(「民主主義」を発明すると「自由の女神」建設に着手できる、とか)にすぐれていることもひとつ。それから一番重要なのは、小さなことが次々と連続して起きるため、切り上げどきが難しいということだ。小さなカタルシスは頻繁にやってくるのに大きなカタルシスがほとんどなく、もうちょっと、もうちょっととついつい続けてしまう。悪魔のようなゲームである。


99/02/02 (Tue.)

 『寄生獣』を連載していた頃だから、もうだいぶ前から「アフタヌーン」を読んでいる。ここ数年パワーが落ちてきていると思いつつ、ときどきいいものが載るのを期待して読んでいるところへ、今月は『ヨコハマ買い出し紀行』にいいセリフがあった。
 『ヨコハマ買い出し紀行』は、温暖化で海面が上昇した少し未来の話。人口はだいぶ減り、残された人々がぽつりぽつりと暮らすアシの原っぱの中に喫茶店があり、アルファという女性型アンドロイドがいる。で、今月はうたた寝するアルファが夢の中で空を飛ぶという内容だった。午後の光は夕方に変わりかけ、空の青と夕焼けの赤がまじり雲を染めるその中をすべるように飛んでいく。原っぱの向こうに知り合いの少年を見つけて出た言葉が

タカヒロだ こっち見てるね

 これです。いいですね。いいでしょう。見てるね、の「ね」がいい。夢の中で意識がややぼやけたまま、できるはずがないのに疑いもなく空を飛んでいる中でいかにも出てきそうな「ね」だ。こういう言葉の選び方をする作家だからか、夏の強烈な日差しに「どばー」なるオノマトペ(擬音書き文字)をつけたりする。まったくもっていい感じである。


99/02/03 (Wed.)

 ウディ・アレンの『地球は女で回ってるDeconstructing Harry』観る。主人公は例によって神経質な作家のウディ・アレンで、現実と虚構をしゃきしゃきと切り刻んで並べたような作品。ウディ・アレンの現実と願望をいろんな手口でご披露してくれちゃって、パンフを読むと元ネタがあるネタも多々あるようだったけれど、今日はこちらの体調思わしくなく、こまごまとしたくすぐりをなめたくらい。ウディ・アレンて、いろいろちょまちょまこせこせしつつ、結局ナンカウマイコトヤッテル人のような気がする。『地球は女で回ってる』という邦題は言葉のリズムが好きだけど、実際の中身は『地球を女が回ってる、その中心にウディ・アレン』っちゅー感じであった。あ、それとは別に最後の表彰シーンは、良いんだけど「いいのか〜?」でもあるけど良いシーンでした。


99/02/04 (Thu.)

 某氏は左ききだ。歯医者での話。
 某氏の口をのぞきこんで治療中の歯医者、「おや、きみは左ききなのかい」と言う。某氏、思うにまかせぬ口から「はぇ(はい)」と返事をすると、「え? いや、きみじゃないよ」歯医者は看護婦に声をかけていたのだった。いくら歯医者でも、歯並びできき手がわかるわけではないらしい。


99/02/06 (Sat.)

 現在、世の中に存在する「ホームページ」には、4種類の意味があるようだ。

  1. WWWブラウザで表示する単位となる「Webページ」。
  2. 一連のWebページの集合体。「Webサイト」。
  3. Webサイトを構成するWebページのうち、最上位にあるいわば入口のWebページ。「トップページ」。
  4. WWWブラウザを起動した際、最初に表示されるWebページ。「スタートページ」。

 「ホームページ」は、もともとは「スタートページ」を指していたらしい。ブラウザのツールバーにはたいてい「ホームへ戻る」ボタンがあるが、ここで戻る先になっているページこそが「ホームページ」だったのだ。
 「スタートページ」と同義だった「ホームページ」がいつの間にかWebページ一般を指すようになってしまった理由については、「WWW」が1ソフトウェアの名前にすぎなかった時代のこんな話を聞いたことがある。
 「WWW」がNextStepというOSの上で動作するソフトウェアだった頃。「WWW」を初めて見た人が、そのスタートページに「ホームページ」と表示されるのを見て、「WWW」で表示されるページ一般のことを「ホームページ」と呼ぶのだと誤解してしまった――というもの。
 最初の誤解は、WWWが普及するにつれて取り返しがつかなくなってきた。特に日本では、「ホームページ」が「ホーム」と「ページ」という、ともになじみのある語の組み合わせだったせいか、マスコミが「Webページ」という単語の代わりについつい使ってしまい、それが十分普及してしまったという経緯があるように思える。その結果、「わたしもホームページを作ってみました」(これは「Webページ」のこと)とか、「弊社のホームページをご覧ください」(これは「Webサイト」のこと)といった言い回しが成立してしまったのだった。
 原理主義者の中には「スタートページこそがホームページであって、WebページやWebサイトのことをホームページと呼ぶべきではない」とする向きもあり、そう考える人たちが吠えているサイトもたくさんあるのだが(くわばらくわばら)、ここまで普及してしまった「ホームページ=Webページ」という用法を今から是正するのはまず無理だろう。
 一方、「ホームページ」の略語としての「HP」は微妙な線上にあるようだ。先の原理主義者に限らず、コンピュータ好きの人にしてみれば「HP」はHewlett Packardのことじゃんか、けっ素人が、という感情が働くようで、「皆が使っているから」という理由で「HP」という語を疑いなく使う人々(それが悪いこととはいちがいに言えないだろう)との軋轢があるように見える。
 じゃあ自分はどうなのか、といえば、「ホームページ」については上のように多義化してしまっているため、あえて意味が曖昧な語を使う必要もないだろう、それぞれに言い替え用の語もあることだし、というスタンスである。「HP」のほうはさすがに違和感があり、自分から使おうとはまず思わない。というところ。


99/02/07 (Sun.)

 今日は我が家のマシン環境の大改造の大作戦。コンピュータじゃない人にはよくわからん内容ですみません。

  1. PC-386のDOS環境をPC-9821Apに移行。
     PC-386にはCyrixが入っており、「Powered by 486」のシールが貼られちゃったりしていたのだが、9821ApのDX2/66のスピードに比べればまったくお話にならないレベルだったことがわかった。「コンピュータは速ければ速いほどいい、速くて困ることはない」というのは某氏の至言だが、DOSでこのスピードならもう文句なし。数年前にV30のPC-9801VMを手に入れて以来、ここまで来たかという気分。いやそりゃもちろん今売っているパソコンに比べればずっと遅いのはその通りなんですけどね。
     今後の課題:ルートディレクトリの整理。しかしWin3.1向けにインストールされているとおぼしきディレクトリはうかつに移動できない。こんな時代にWin3.1の勉強をするのも詮のないことであるから、ルートの整理といっても思うようにはいかないだろうが。
  2. PC(DX/33)の壊れてしまったハードディスクを摘出、別のハードディスクを移植してWindows 95をインストール。
     外付けの240MBハードディスクからドライブを取り出し、これをPCへ移植手術したというわけ。幸い拒絶反応もなく、インストールは無事完了。Win95はスキャナくらいにしか使わないつもりだから、この容量でも十分。
     今後の課題:ネットワークの設定が悪いらしく、ルータ(NECのCOMSTARZ RT-DS)が見えない。その向こうにあるMacintoshも見えない。DHCPサーバへIPアドレスの発行を求めに行ってくれない。
  3. PC(DX2/66)の200MBハードディスクを420MBのものに入れ替え、Plamo Linuxをインストール。
     Plamo Linuxのインストール方法をすっかり忘れてしまっており、当初SCSI接続のCD-ROMが認識されずあわてた。「boot:」に対してbootdsk aha1542=0x230(「0x230」の部分は、SCSIカードに設定されているI/Oポートアドレス)と入力するのだった。とりあえず「お薦めパッケージ」はすっかり入った。
     今後の課題:ethernetカードの設定を、以前インストールした時のメモに従って「ether=5,0x200,eth0」としたが、これが間違っているらしくカードを認識しない。DOSで起動して設定ユーティリティを使うこと。

 こんなことをしているうちに、もう夜になってしまった。ご静聴ありがとうございました。今日これで、マシン環境についていくつもの懸案がいちどきに片づいて、とてもすっきりした気分。Macintosh-Linux-Windows95のネットワーク化という目標に、また少しだけ近づいた。


99/02/08 (Mon.)

 「働く女性の新しい出会い」と銘打った『Internet Life!』が届いた。というのは、この中の「恋も仕事もハッピーにしたい!OLカナ子の1999年は占いで勝利!〜占いエリアはどこが当たる?」というコーナーの中に「点取占い」が紹介されたからなのだった。ほんの数行、画面図もナシというごく小さなものだが単純に嬉しい。この紹介文は

「爪はまだまだのびるだろう○6点」など、意味不明のお告げが魅力な点取占い。子供の頃、よく遊んだよね。

というもの。数ある文面の中で、自分でも気に入っている「爪はまだまだ…」が選ばれているところがまた嬉しい。
 ところでこのムック、表紙に「ローソン限定販売」と小さく書いてある。本屋では売ってないってこと?そういう販売形態もあるんですね。


99/02/09 (Tue.)

 行きましたよローソン。といいますか、ローソンといいますと自分にとって心理的にも物理的にもはるか遠いコンビニでありまして、さあ行こうと決意しなければ行かないようなところにしか存在しないのであります。普段の行動領域にあるコンビニといえば、ファミマ、ブンブン、アンパン、サンクスくらいでして。あ、答えはファミリーマート、セブンイレブン、ampm、サンクスです。最後のはちょっと簡単だったかな。
 ともかく、ローソンに行きましたよ。ありましたよ『Internet Life!』。点取占いもちゃんと載ってましたよ。当たり前ですよ。
 ところで。最近世間では2000年問題に関する話がかまびすしい。しかし、それよりももっと恐ろしい問題があるのだ。それは2000円問題。あらゆるものが2000円になってしまうのだ。ジュース1本2000円。iMacも2000円。のらくろガムも2000円。JR初乗り2000円。マンション2000円。庭付き一戸建て2000円。1000円札は2000円、10円玉も2000円。給料2000円。ボーナス2000円。年俸制の人は年収2000円。一方バイトくんは時給2000円。内職の造花1本2000円。これでは世の中めちゃめちゃだ。こんな大変な問題が今まで見過ごされてきたとは。ほかに2000円問題を扱っているサイトはないのか。あった!「郵政省の景気対策臨時緊急特別枠要望施策(案)について」だ。この文書のほぼ最後、「6.その他<83億円> 1.コンピュター西暦2000年問題への対応(4億円)」の項に、「電気通信西暦2000円問題」とある。これだ。(郵政省サイトにあるオリジナルではちゃんと「電気通信西暦2000年問題」になっているから、書写ミスのようです)
 あと、「www.noriko.com」というイカすドメイン名のサイトにも、2000円問題への言及が。やはり大変なことになっているようである。早急に対策を講じなければ、取り返しのつかないことになるだろう。と書いていると、なんだか五島勉になった気分だ。いろんな意味で。そんなこと言っちゃいけないか。


99/02/11 (Thu.)

 冬なので気分が出るだろうと、真保裕一の『ホワイトアウト』(新潮文庫)を読み始めた。
 新潟県と福島県の県境近く、雪に閉ざされた山奥の巨大ダムがテロリストに乗っ取られるという、アクションでサスペンスな話。雪山の描写が寒くて寒くて、
「雪がつぶてとなって、まともに顔にぶつかってくる。息が詰まり、目を開いているのさえ辛く感じる」とか、
「にじみ出た汗が背中や脇で冷え、体の熱を容赦なく奪っていった。血管までが寒さで縮こまっているらしく、風の鳴る音とともに耳の中で血液の脈動がやけに大きく聞こえた」とか、いかにも寒そうな場面が満載なのだった。うー、寒い。今日は東京でも雪になり、ちょっと気分出すぎである。おまけにテレビで『遊星からの物体X』をやっていたでしょう。この映画、舞台が南極!次から次へと冬本番な1日であった。


99/02/14 (Sun.)

 この週末は、さらに冬本番な場所へ向かった。その地は水上、宝台樹(ほうだいぎ)スキー場。白銀に招かれ、チェーンを巻いて着いた宿屋では、深夜ときどき「ゴゴゴゴゴゴゴ」と屋根から雪が落ちる音が聞こえてくる。リフトで山頂に来てみれば、吹雪に顔を向けることすらできず斜面の行き先は雪にまかれてまったく見えない。人が少ないゲレンデは新雪ばかりで滑りにくく、人が多いコースでも端へそれるとずぶずぶと新雪に埋まっていく。
 とまあ、そんな土地で冬を満喫。すっかり筋肉痛の素をかかえこんで帰ってきたわけである。今日まだ筋肉痛にならないのはおそらく、明日以降に痛み始める前の静けさなのだった。


99/02/16 (Tue.)

 「海亀のスープ」というゲームがある。出題者と回答者がおり、出題者はある物語の骨子を回答者に話す。回答者は、その物語の因果関係を当てて楽しむというもの。
 「海亀のスープ」の骨子は、「男が、海亀のスープを飲んだ翌日に自殺した。なぜ?」である。回答者は、この物語の因果関係を知るために、出題者にいくらでも質問できる。ただし、質問の答えが「はい」「いいえ」「物語には関係ない」のいずれかになるものに限られる。たとえば、「男は過去に海亀のスープを飲んだことがありますか」と聞くことはできるが、「海亀のスープはどんな味ですか」と聞くことはできない。
 このゲームで重要なのは、出題者と回答者は対立関係にあるわけではないということ。出題者は回答者の想像力をうまくコントロールして、1つの物語へ収斂させていく。回答者は出題者が答える「はい」「いいえ」「物語には関係ない」の微妙なニュアンスを読みとり、1つの真実に近づいていく。なかなかスリリングな体験である。
 「海亀のスープ」という話にはいくつかのバリエーションがある。最終的にたどり着く物語さえきちんと作ってあれば、この形式のゲームにできるわけである。そこで、北村薫の『空飛ぶ馬』(創元推理文庫)に所収の、『砂糖合戦』という短編をこのゲームにあてはめてみた。こちらの骨子は「喫茶店で3人の若い女性が紅茶を注文。根比べをするように、それぞれがそれぞれのカップにひたすら砂糖を入れている。なぜ?」というもの。結果は上々。
 北村薫のこの本は、「円紫さんと私」などと呼ばれるシリーズの1作目で、日常生活の中でふと見かけた不思議な光景の謎を、落語家の「円紫さん(これがホームズ)」と女子学生の「私(これがワトソン)」が解いていく形式のミステリーである。ミステリーといっても血なまぐさい謎はなく、上のような「砂糖合戦」だったり、幼稚園の遊具の馬が夜だけいなくなる(『空飛ぶ馬』)というものだったり、スケールが小さいものばかり。しかし、ミステリーとしての質は高く、謎解きの面白さがきわだっている。だからこそ、「海亀のスープ」のようなゲームの爼上に乗せても十分に堪えうるのだ。
 『砂糖合戦』がうまくゲームになったことに気をよくして、ほかの作家ではどうかと考えた。最初に謎があり、その因果関係をつきつめていくものといえば…宮部みゆきの『理由』だ!
 「嵐の夜、下町の高層マンションで一家4人が殺された。なぜ?」
 しかしこの長編をゲームにするとして、出題者があの複雑なプロットをすべて理解し、覚えておくのは至難をきわめるだろう。それに、回答者が物語をすべて語るとなると、ゲーム終了まで数時間ではすまないはず。うまくやればすばらしい知的興奮を味わえそうだが、『理由』を「海亀のスープ」に使うのはさすがに遠慮したい。


99/02/17 (Wed.)

 初めて読んだ宮部みゆきの作品は新聞連載での『理由』だから、彼女の作品を読み始めてからそうたっていないことになる。
 『理由』は、殺人事件が起きた理由を広く深く探っていく小説である。殺人事件に至った理由は。理由の理由は。またその理由は。主人公はおらず、たくさんの人間関係がゆっくりとじっくりと、ときには登場人物へのインタビューという破天荒な形式をとりながら明らかにされていく。力作である。
 次に読んだのが『龍は眠る』と『火車』(いずれも新潮文庫)。これも良かった。『龍は眠る』は、宮部みゆきが得意な「超能力者の悲哀」を扱っている。一方の『火車』はカード破産の話で、人探しをするうち、一度も登場していない人物の人となりが浮き上がってくる様子が読ませる。さらに、短編集『地下街の雨』(集英社文庫)、ライトなライトなコメディ『ステップファザー・ステップ』(講談社文庫)、時代物でも超能力な『かまいたち』(新潮文庫)と読んだところで、宮部みゆきは直木賞を取ってしまった。ではまたなにか宮部みゆきの本を読もうと思えば、ちょうど本屋には『クロスファイア』(光文社ノベルズ)が並んでいる。これは『鳩笛草』に収められた一編の続編であるということで、超能力哀歌の『鳩笛草』(光文社ノベルズ)を読む。続編をすぐに読むと印象がだぶってしまいそうで、ごく最近出た『蒲生邸事件』(光文社ノベルズ)へ。現代から2・26事件のまっただ中へタイムスリップした少年の話。ラストがさわやか。で『クロスファイア』へとなだれこんだのだった。
 1冊1冊はどれも面白く、こんなふうにさくさく紹介してしまうのがもったいないくらいなのだが、残念ながら『クロスファイア』だけはやや別格だった。1杯ぶんの濃縮ジュースを無理に2杯にうすめたような印象。ラストはさすが宮部みゆきの力量で、むりやりさわやかな気分にさせられてしまうが、消化不良なものごとがいくつもあり、さわやかな気分と治まりきらない気分がないまぜになって奇妙な読後感である。ここまで宮部みゆきは全部水準以上の面白さだったので、あれっと意外なところだった。
 宮部みゆきは、形容表現に独特の技を持っている。『理由』で、弟に痛いところを突かれた姉がしゅんとなってしまう様子を「空気が抜けた風船のように、ぺしょんとなってしまった」(本は手元にないので、細部は違うかも)なんて表現してしまうのだ。突拍子もないものを引き合いに出しているようで、その場の様子を実に的確に描出している。こういうのが好きなのだ。


99/02/18 (Thu.)

 陽気に誘われ、鼻が今日から花粉を関知すると宣言した。2月18日は花粉の日だ。なぜなら

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2/18

 だから。いいの!そうなの!
 この日のできごとは、歴史をやたらとさかのぼってくれるのが面白い。2月18日は?


99/02/19 (Fri.)

 昨日の暖かさで今月の平均気温が上がるのを恐れた誰かが仕組んだとしか思えない今日の寒さ。東京では雪まで降ったりなんかしちゃったりして、どうやらバランスはとれたらしい。
 最近たてつづけに小学館文庫である。夏目房之介『手塚治虫の冒険』と山根一眞『メタルカラーの時代1』。
 ところが! あっ、愚痴が出そうだと思ったでしょう。そうなのだ。改めて、
 ところが! 内容以前にレイアウトがあまりにずさんで、気をそがれることはなはだしい。「(日)」ってのはたぶん丸数字の「(1)」なのだろうな。MacOSでWebを見ているとよくある機種依存文字だ。対談形式の『メタルカラー』では、話者が替わっているのに改行がない部分がある。あるいは、行間が一定でない部分がある。平体(文字をつぶして、1行に入る文字数を増やす)の濫用、文字詰め(文字と文字の間隔)のバランスが悪い。いかにもDTPで作ったらしい、見栄えのしない文字づかいである。「小学館文庫」と名乗るわりには、大出版社らしからぬ質の悪い文字たちを見せられると、本の内容を理解する以前に、そこにどんな文字が書いてあるのかを読み取るために脳を使わねばならなくなる。本への没入度が下がり、ストレスが残る。これは、ハーフレートの携帯電話では音質が悪いために込み入った話をする気が起きないようなもので、相手が何を発声したのかを聞き取る作業に脳が追われて、なかなか話の内容にまで脳の手が回らない状況に似ている。本の内容がいくら良くても、その内容を理解する以外の部分への脳の負担が大きくては価値も半減である。ほかの文庫が、長年の蓄積で読みやすいページを作っているところを見習ってほしいものだ。


99/02/20 (Sat.)

 耳鼻科突撃。もらった薬は、レフトーゼ(50mg)は1日3錠、セレスタミン、アレギサール(5mg)は1日2錠。GN-FGは1日2包。点鼻薬はフルナーゼ(鼻閉用)4ml、フルブロン(鼻汁用)7ml。セレスタミンが抗アレルギー剤なのだが、これが眠くなること。薬がなくなる来週末までは、ぽーっとした生活になりそうである。


99/02/21 (Sun.)

 ものごとは突然たてつづけにやってくるもので、日経MACMACLIFEも、今月の付録CD-ROMにMacintosh用のLinux、「LinuxPPC」を収録している。おまけにSoftware Designの今月号、第2特集は「MacでUNIX」ときたもんだ。
 付録のCD-ROMというものは、バックナンバーの在庫が切れると入手が難しい。今LinuxPPCを家のマシンにインストールしないまでも、あとでその気になるかもしれないと、日経MACを買ってみた。ら、このパッケージにはコンパイラがついていないという。コンパイラがないのでは、「とりあえず使ってみる」くらいしかできない。ばかばかしい気もするがMACLIFEまで買ってしまった。で案の定というか、買っただけでまだインストールはしていない。我が家のメインマシンであるMacintoshに、別のOSをインストールするのはさすがに躊躇があるのだった。そのうち気が向けば、外付けのハードディスクにでも入れてみるつもり。
 それにしても最近は、猫も杓子もLinuxである。コンピュータにあまり詳しくない友人から「最近は只のOSがあると聞いたが」なんて聞いたりすると、Linuxって注目されているのだなと思ったりする。
 しかし、個人で使うに関しては、Linuxはまだまだ趣味人や好事家のためのものだ。これからの世の中、コンピュータが使えないとね、なんつってコンピュータ教室に通うような種類の人にとっては、Linuxは今のところまったく縁のないOSだといっていい。仕事で書類を作るなら、Windows上でWordや一太郎、Excelを使うのが一番だ。なぜなら、皆が使っているから。
 キーボードの配列には何種類かあり、現在普通に使われている配列は「QWERTY配列」という。キーボードの上から2段めを、左から並べるとQWERTYになることから名付けられた。実はこのキー配列、わざと打ちにくい配列になっているのだ。タイプライターの時代、キーを打つ速度が速すぎると、活字を印字するアームとアームが互いに引っかかってしまう。そこで、キーボードをあまり速く打つことができないように考えられたのが、現在の「QWERTY配列」なのである。のち、より打ちやすい配列としてDvorak配列というものが考案されたが、皆QWERTY配列に慣れてしまっていたため普及しなかった。
 WindowsとLinuxの関係もこれに似ている。Windowsは決して使いやすいOSとはいえないが、皆Windowsを使っていて慣れているからこそ、今日もWindowsが使われる。いくらLinuxに勢いがあるといっても、まだまだインストールは難しいし、アプリケーションも少ない。使うにあたって知っておくべき知識も多い。前述の、コンピュータにあまり詳しくない友人がLinuxを使い始めるのは、まだまだまだまだ先の話だろう。


99/02/22 (Mon.)

 マンガ家のみず谷なおきが、この2月8日に亡くなっていた。38歳。合掌。


99/02/23 (Tue.)

 みず谷なおきについてはいろいろ書いておくのがよいのだろうが、ゆうべはそういう気分にならなかった。『人類ネコ科』が良かったとか、そんな話をするのがなぜだか、不誠実なことのように思えた。
 死んだ人に関する記憶は、生きている人たちの中から消えていく。生きている人たちは生きるのに忙しく、死んだ人のことをいつまでも覚えているわけにはいかないから。それはそれで普通のことだし、それでいいのだと思うのだけど、みず谷なおきに対しては10年前に『人類ネコ科』が完結して以来今まで彼のことを忘れてしまっていたぶん、彼が亡くなったことで今まで彼のことを忘れていたことを思い出し、そして彼のことを思い出して彼について語るのは悪い気がする。一方で、彼が亡くなったからといってまたすぐに彼のことを忘れ直してしまうのも悪い気がする。かくして、ここにこれ以上みず谷なおきのことを書くのはやめにしつつ、自分の心になるべく彼のことをとどめておくべきだと思うのだった。


99/02/24 (Wed.)

 Nikkei BP BizTechというニュースサイトがある。コンピュータ関連を中心に、その他いろんなニュースが集まっているサイトなのだが、全般に硬いニュースの中に「ネット恋愛講座「Eメールで恋をしよう」開講!」というタイトルを見つけたからには、読んでみないわけにはいかないだろう。記事からジャンプした先にあったのは、「ネット恋愛スクール メール恋愛コース」。ではと「実録! ネット恋愛成功メール&失敗メール」を見てみると、そこにはめくるめく…というか頭がクラクラしてきた。これを読んでなれるメールの達人とは、いったいどんな達人なのやら。


99/02/25 (Thu.)

 「だんご3兄弟」関連情報


99/02/27 (Sat.)

 たいていの文庫には紐がついていないため、しおりが必要になる。古本でなければたいてい新刊案内がはさまっており、たいていこれをしおり代わりに使うのだがこの本、最初のページにはさんだはずの新刊案内がコツゼンと消えている! 本が『アズマニア』(ハヤカワ文庫)なだけにSFな気分である。おかしい、どこだ。オチはありません。


99/02/28 (Sun.)

 考えてみれば、吾妻ひでおは「あづまひでお」なのだから、「アズマニア」じゃなくて「アヅマニア」なような気がする。
 今日は車のちょっとした修理を頼みに、ホンダの店に行ったわけである。修理は本当にすぐ終わったのだが、さて帰ろうと車に乗り込むと、ぶはっ、タバコ臭い!こりゃたまらん。ご配慮を〜(ぱた)


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