旧ユーゴ映画のページ

 (2000年10月27日更新)




  •  「ビューティフル ピープル」(99年、イギリス。監督ヤスミン・ディズダール=ボスニア出身)来春公開!

     旧ユーゴスラビア出身の新人監督によるイギリス映画で、ボスニア紛争を通じてイギリスの人々が“生きることの意味”に気づいていく、というハートウォーミングなライトコメディ。99年度カンヌ映画祭“ある視点”部門・受賞作。わたしは、字幕監修と映画パンフレット解説を担当。
    (銀座テアトル西友にて、2000年新春公開予定。ポニーキャニオン配給)


     最近の旧ユーゴスラビア関係では、次の映画が注目されます。

  •  「エグザイル・イン・サラエヴォ」(タヒア・カンビス作品=97年オーストラリア。98年度国際エミー賞・ドキュメンタリー賞受賞)
     オーストラリア在住の俳優が、母親の故郷であるサラエボを訪れて撮影したドキュメンタリー。
     99年2月6日より、東京渋谷のアップリンク・ファクトリーで上映。作者のタヒア・カンビスも来日。パンフレットに背景説明の文章を書かせていただきました。(
    「エグザイル・イン・サラエボ」とその背景
     問い合わせは、アップリンク(電話03-5489-0755、またはアップリンクのホームページ)まで。

  •  「ウェルカム・トゥ・サラエボ」(イギリス人ジャーナリストとサラエボの少女ナターシャ、それをめぐる人々との葛藤。マイケル・ニコルソン本人の原作=青山出版社刊=をもとにし、ジャーナリズムとは何かということも考えさせる映画=98年秋に日本公開。近日ビデオ発売?)


     パーフェクト・サークル

     ボスニア映画「パーフェクト・サークル」が、98年4月18日から東京・岩波ホールで上映されました。
     [あらすじ]ボスニア戦争中、妻と娘が町の外に脱出して1人きりになったサラエボの詩人の家に、難民の兄弟が入り込む。兄弟の身寄りがドイツにいることが分かり、包囲されていたサラエボからなんとか脱出するルートを探るというストーリー。(97年9月にサラエボで封切り。99年夏WOWOWでも放送)
     感想は
    こちら


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     ボスニア! ボスニアを東京まで拡大せよ

     原題は「美しい村、美しい炎(美しい村は、燃えるときも美しい)」。監督のドラゴエビッチは3冊の詩集を出版している詩人でもある。かつての多民族国家への、ユーモラスで悲しいレクイエムである。(千田が字幕監修)
     映画「ボスニア!  ボスニアを東京まで拡大せよ」は、詩人のスルジャン・ドラゴエビッチ監督、ドラガン・ビエログルリッチ、ニコラ・ペヤコビッチ主演。98年6月27日(土)より、東京・中野武蔵野ホールほかでロードショー。(99年夏WOWOWでも「ボスニア!」の題で放送。同名でビデオも発売中)問い合わせは、パイオニアLDC(電話03-5721-6991)まで。
     セルビア映画「ボスニア!  ボスニアを東京まで拡大せよ」
    プレスリリース・パンフレット「幼なじみがなぜ殺しあったのか(千田 善)


     ☆☆ダンカ・マンジューカ制作ブコバルに手紙は届かない

     ベルリンの壁が崩れ、ユーゴで民族主義が激しくなってきたころに結婚したセルビア人とクロアチア人のカップル。新郎はユーゴ連邦軍に徴兵され、新婦の父は独立宣言を出したばかりの新設クロアチア軍に。クロアチア戦争の最大の激戦地ブコバルを舞台に、民族と戦争の真実を考える。(千田が字幕監修)
     
    「ブコバールの過去、現在、そして・・」(映画「ブコバルに手紙は届かない」解説)
     ビデオ・レンタル中(ビデオのタイトルは「ブコバル」)。


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     このほかに、ユーゴ関係で上映された映画は、97年度の「キネマ旬報」ベスト10に入っただけでも以下のようなものがあります。
  •  ☆☆☆「アンダーグラウンド」(エミール・クストリッツァ監督=カンヌ映画祭パルムドール受賞)
     (エミール・クストリツァ監督作品としては、ほかに、☆「パパは出張中」、☆☆「ジプシーのとき」などもあります。)
  •  ☆☆☆ミルチョ・マンチェフスキー監督「ビフォア・ザ・レイン」(マケドニア西部を舞台にし、多数民族のマケドニア人とアルバニア系少数民族との一触即発の関係を叙情的に描いた、悲しく美しい作品)
  •  ☆☆テオ・アンゲロプロス監督「ユリシーズの瞳」(ギリシャの鬼才アンゲロプロス監督が旧ユーゴ紛争に挑んだ作品)
     作家の楠見朋彦さん(すばる文学賞受賞、芥川賞候補)から、以下のようなお手紙をいただきました。

     これは名作です。原題も「Ko to tamo peva?(あそこで歌っているのはだれだ)」。ユーゴ人(セルビア人)のメンタリティが実によく出たコメディ。
     これをあげるならマノイロビッチの出世作(?)「3人でシュプリッツァ」(原題は Nesto izmedju=何かと何かの間にあるもの=83年ユーゴ)も名前ぐらい出しておいたらいいかもしれません。

     Kさんからは、このほかに「スペイン風の庭」(95年 仏・英・独=監督ゴラン・パスカリエヴィッチ、出演ミキ・マノイロヴィッチ、トム・コンティ、マリア・カザーレス)も推薦していただいたのですが、わたし、まだ見ていないので、何とも。

     同じく楠見朋彦さんのおすすめです。(文章は楠見さん)

    「思春期」(l'age ingrat/The tough teens )94年・仏  ネナード・ディズダレヴィッチ監督

     第二次大戦前夜のユーゴの(サラエヴォ)、ある寄宿制中学で繰り広げられる青春物語。原作はブランコ・コヴィッチですが、特にユーゴだから、という観点を越えて、例えばジャン・ヴィゴの「操行ゼロ」やトリュフォーの「大人は分かってくれない」、ルイ・マルの「さようなら子供たち」などの系列に加えられてもよいような、ほろ苦い秀作です。しかも、後日譚(撮影秘話)があります。この映画、92年に撮影が終了するも戦争のため編集がままならず、監督は亡命先のパリで、なんとか完成にこぎつけたというわけです。そして数年後、映画に出演した子供たちを戦時下のユーゴに訪ねて歩く「失われた思春期」(堅立京子著 径書房94年)という本が日本で出版されています。すっかり「大人」になったこども達との出会い(再会)が感動的(スナイパーの犠牲者になった子や、行方不明のこどもが多いのですが、それも含めて)。


    似た事情で、散逸したフィルムを、プロデューサーのアンジェロ・アランジェロヴィッチが東奔西走して集め、完成後数年を経てようやく一般公開されたものに、

    「リック」(The dark side of the sun)  ボジダール・ニコリッチ監督 97年・米
    が挙げられます。

    ブラッド・ピット幻のデビュー作(当時23歳)というので話題になったため、知る人も多いはず。太陽光線にあたることができない難病に侵され、各地を転々とする青年が両親と滞在している舞台が、アドリア海に面した小島シュベティ・シュテファン(多分。あるいはドブロヴニクか)。G線上のアリアをバックに、バイクで飛ばす海岸線がかぎりなく美しい。

    私はこれで会社を辞めました。

    クストリッツァの新作がヨーロッパで公開されているようですね(「白猫、黒猫」というような題だったと思います)。サントラが売っていました。今回はゴラン・ブレゴヴィッチとのコンビを解消したようです。そのゴラン・ブレゴヴィッチのベスト・アルバムがでているので最後に紹介しておきます。

    「EDERLEZI〜songs for weddings a nd funerals〜」 (98年 PolyGram) GORAN BREGOVIC

    収録曲;ジプシーの時、アリゾナ・ドリーム、王妃マルゴ、アンダーグラウンドなどから17曲

    「セイヴィア」(98年 米)
    ボスニア戦争後、セルビアを舞台に(現地で )撮影されたアメリカ映画。爆弾テロで妻子 を失い、傭兵になった元アメリカ軍兵士ギイ (デニス・クエイド)が、紛争さなかのボス ニアにスナイパーとして派遣されるところか ら話は始まる。解放された捕虜のなかには、 敵兵によって「身ごもらされた」女性がいた 。彼女を実家に送り届ける道中に、さまざま な事件が起こる。女性に加え、トンネルのな かで生まれてしまった赤子を連れて、ギイは スプリットの赤十字目指して逃避行をつづけ るのだが・・・。製作にオリヴァー・ストー ンが名を連ねているものの、派手な戦闘シー ンはほとんどない。戦闘後の廃墟や、掘っ建 て小屋、あくまでもうつくしい山河、湖(こ の湖が、悲劇のラストシーンを準備するのだ が)を背景に、人間性を失っていた傭兵と、 頑なだった母親のこころが、赤ん坊の世話を 通して段々とほぐれていく様子が淡々と描か れる。監督はユーゴ出身のPETER ANTONIJEVI C。劇中で母親が何度か歌う、おそらくセル ビアの伝統的な子守歌が、実にうまく使われ ていた。(楠見さん)

    ドゥシャン・マカヴェイエフ監督
     ベオグラード出身の特異な映像作家。大胆 な性表現と過激な政治的メッセージ、その前 衛性ゆえに一部で熱狂的に支持されるも一般 的には等閑視(タブー視?)されてきたとい う、典型的なカルトムーヴィー作家。日本で も数年前からマイナーな映画館で特集が組ま れて話題を呼び、かなりヴィデオ化(タクス コ/バンダイヴィジュアル)もされている。 (下記のものはすべて大阪阿倍野ツタヤ店頭 に並んでいました)

    「人間は鳥ではない」(65年ユーゴ)
     セルビアのある炭鉱町(Bor)を舞台に、 仕事に追われる技術職の中年男と、下宿屋の 娘の束の間の恋を「17種類の灰色」でえが く。催眠術師の集団催眠やサーカスの映像も 挿入される、マカヴェイエフの原点、幻のデ ビュー作。
    「愛の調書、または電話交換手失踪事件」( 67年ユーゴ)
     井戸で発見された女性の死体の、「生前と 死後の生活」を同時進行で語り進める。
    「保護なき純潔」(68年ユーゴ)
     42年に製作されていながらナチスの検閲 によって上映禁止になった、初のセルビア語 によるセルビア映画フィルムの断片(伝説の 「鋼鉄人間ドラゴリューブ・アレクシッチ」 監督・主演)と、製作関係者への取材や当時 の社会情勢などをコラージュ。爆撃後のベオ グラードの映像は、あの「アンダーグラウン ド」でも引用されていた(はずです)。
    ベルリン映画祭銀熊賞。

    「WR オルガニズムの神秘」(71年 ユ ーゴ・西独)
     ヴィルヘルム・ライヒのライフストーリー と性革命家の生活を交錯させる。

    「スウィート・ムーヴィー」(74年 仏・ 西独・カナダ)
     過激でブラック、アイデア一杯。これ以上 コメントできません...

    「モンテネグロ」(81年 スウェーデン・ 英)
     主人公の名前がモンテネグロで、ツルナゴ ーラとは全く無関係のようです。

    「コカコーラ・キッド」(85年 オースト ラリア)

    「マニフェスト〜欲望のパラダイス」(88 年 米)
     20年代ヨーロッパの、仮想の街を舞台に くりひろげられる王制打倒の寓話。

    それぞれ簡単なコメントつけておきました。 小生も何本か見ましたが、やはり「一般向け 」ではないようです。。。(楠見さん)


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