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幼虫のエサの量と容器のサイズ

2000年10月21日

 カブトムシ関連のホームページもいろいろありますよね。それぞれ個性があって、見ていて楽しめますし、カブトムシの飼育のしかたもそれぞれ工夫されています。そういうホームページでは掲示板を用意していて、おおいににぎわっているところも少なくありません。

 そのような掲示板をながめていると、ときどき目にするのが次のような質問です。

幼虫が□□匹います。どれくらいの大きさの容器が必要でしょうか。

 これはむずかしいですよねぇ。私がペットボトルで1匹ずつ飼っていて、とりあえずちゃんと成虫になったのですから、1匹だけなら2リットルの容器で十分というのはわかります。でも、問題なのは容器の大きさだけでしょうか?

 いくら大型の容器を使っても、入れてあるマット(=エサ)の量が少なければ意味がありません。容器の形も幅広のものや縦長のものがあります。それに幼虫が1齢なのか、2齢か、3齢かで違いますし、3齢なら蛹室を作る時期とそれ以前でも違うかもしれませんよね。

 容器の大きさを考えた場合、底面積という要素と、高さ(深さ)という要素があります。必要なマットの深さは私にはよくわかりません。あまり浅いのはよくないだろうなあとなんとなく思いますが、具体的に何cm以上必要とかは「?」です。どこかで「15cm以上にしましょう」と書いてあったのを読んだような記憶があるんですが・・・。春の蛹の時期には蛹室を作る都合があり、♂の場合蛹室の高さが10cm以上になりますから、最低でも15cmというのは納得できる数字ですが、それ以前の時期ではどうなのかというと、経験と情報が不足していて判断がつかないんです。

 容器の底の面積は、1頭あたり10cm四方(100平方cm)くらいは必要だろうと思います。そう思う理由はあとに書くことにして、次にマットの容量という観点で考えてみたいと思います。

 岩崎書店の「カブトムシのかいかたそだてかた」に、次のように書かれているんです。

いちばんたべる3令幼虫のときは、1ぴきで1週間に1リットルずつ必要になる。さなぎになるまでに、15リットルくらいは用意したい。

 ということは、例えば10頭の3齢幼虫を飼っていたとして、10リットルのマットだと1週間ごとのエサ交換が目安になります。でも週1回のエサ交換はけっこうたいへんですし、しょっちゅう掘り出されたのでは幼虫も迷惑でしょうから、2週間に1回のエサ交換で済むように2倍の20リットルのマットを使うことにします。20リットルのマットを入れるには25リットルくらいの大きさの容器が必要でしょう。私の場合、容器の置き場所の都合もあって14リットルの容器に10リットル強のマットを入れ、5頭ずつ入れています(この容器が4ヶあります)。10月前半までは2週間に1回のペースでエサ交換をしていました。最近は部屋の温度が下がってきて糞の量も減ってきたので、そろそろ3週間に1回でもいいかなと思っているところです。

 ところで今、「エサ交換」という言葉で書きました。「昆虫マット ケチケチ大作戦」を読んだ方はわかるでしょうが、私は貧乏性なので「エサ交換」とは言ってもマットを全部交換するなんてもったいないと思ってしまいます。そこで最近は「エサ交換」とは言わずに「糞そうじ」と言うことにしました。

 さて、その糞そうじの方法なんですが、「昆虫マット ケチケチ大作戦」で紹介したような、糞をきれいに取り除くという作業はやめてしまいました。今年の夏以降はマットをふるいにかけるだけで済ませています。というのも、独り言コーナーの「クワガタの話」で書きましたが、カブトムシ以外に多くのクワガタを飼育するようになったので、そちらの世話にも時間をとられるようになってしまい糞を拾い集めるための時間がとれなくなってしまったからなんです。

 糞をふるいでより分けることを考えると、マットは最初から細かいほうが便利です。腐葉土とか、昨年愛用していたヤマヒサの「昆虫マット」は目が粗くてふるいに残る分が多いので、マットから糞を取り除くのにふるいだけでは済みません。ヤマヒサが昨年「昆虫マット」という商品名で出していたのと同じマットを、今年は入手できませんでしたので、今年は「腐葉土だけで育てる」というのを試しているのですが、腐葉土から手軽に糞を取り除く方法がみつかっていません。それならばということで、腐葉土をカブトムシの容器に入れる前にふるいにかけて、ふるいに残った分をミキサーで粉砕したらいいんじゃないかと思ってやってみたんですが、これは予想したよりかなり時間がかかる作業で大変でした。そういうわけで、最近はあきらめてしまって、ふるいに残った多くの腐葉土を糞と一緒に捨ててしまっています。

 2週間に1回の糞そうじをしているとき、ほとんどの幼虫が同じ位の深さのところでみつかることがあります。どうもマットの状態や温度によって上へ下へと移動しているように思います。マットの中の糞の割合が増えてくると、マットの上のほうで幼虫がみつかることが多いようです。温度が高いうちは活動も活発で食べる量が多いせいか、糞の量も多くなりますので、糞そうじのときにはマットの上のほうにいることが多いです。最近のように温度が下がってくると、たいていの幼虫は容器の底のほうにみつかりますし、糞の量もやや少なめといった感じです。

 突然話題を変えますが、学研の図鑑でカブトムシのページを見ていて驚きました。カブトムシ幼虫の大あごの裏にはやすりのような凸凹があって、小あごをこすり合わせることによって音を出すことができるという記述があったのです。証拠として電子顕微鏡写真まで載っていました。この音を聴いて(というか感じて)自分以外の幼虫との距離を保ち、誤って傷つけあうような事故を未然に防いでいるらしいのです。

 カブトムシ幼虫が音によって距離を保つということと、上に書いたように、条件によって同じ位の深さに移動しているという2つのことをあわせて考えると、容器に入れる幼虫の数が決まれば必要な底の面積(正確に言うと「水平な面で容器を切ったときの断面積」ですが)が決まるということになるのではないでしょうか。

 人間の場合、「パーソナル・スペース」と呼ばれる領域があって、他人がその領域に入ってくると不快であったりストレスを感じます。この領域の大きさや形には個人差があって、自分を中心としてだいたい半径数十cmくらいらしいのですが、カブトムシの幼虫も他の個体が発する音を感じるような近距離にいるとやはり不快でしょうしストレスを感じるのは人間と同じではないかと思います。これが人間ならば家族や恋人はパーソナル・スペースに入ることを許すわけですが、カブトムシ幼虫にとってはたとえ兄弟であっても知らない他人と同じでしょうから、過密な環境では落ち着いてエサを食べることができないかもしれません。

 先に「容器の底の面積は、1頭あたり10cm四方(100平方cm)くらいは必要だろうと思う」と書いた理由がこれでわかっていただけたでしょうか? 幼虫の行動を見ていると、いつも丸まっているわけではなく、ときには上半身を伸ばしてひらがなの「し」のような形になっていることもありますが、成熟した3齢の幼虫だとこの状態で10cmくらいはある、というのが根拠なわけです。


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