「セッション形式」となって2年目の2001年・福岡では、この年の学会のテーマである「麻酔の安全」ともリンクして、

「歯科麻酔認定医が安全な地域医療の提供にどう貢献できるか」

をテーマとして4名の演者をお願いしました。
また、この年のセッションまでは、主催大学のご高配によりまして、通常のセッションよりかなり余裕を持った時間をいただくことが出来ていました。この年も1時間以上の枠をいただいて、充実した議論を締めくくることが出来ました。
セッション形式でのフォーラムに、一定の方向性が見出された学会でした。

(望月記)



2001年 「歯科麻酔を考える臨床医フォーラム」

(第29回日本歯科麻酔学会学術大会 「歯科麻酔認定医」セッション)

福岡市・おがた小児歯科医院 緒方克也 志岐晶子

 大学で歯科麻酔の研鑽を積まれ、「歯科麻酔認定医」を取得した先生方が、歯科麻酔医としての活動される場が、大学から個人の開業医院、あるいは病院歯科へと移り変わっていくのは大きな流れであり、こうした先生方は現在歯科麻酔認定医の過半数に達しています。しかし、活動の場によっては「歯科麻酔認定医」としての見識や技術を十分に活かすことが出来ず、障壁にぶつかった思いを経験される先生も数多くおられます。

歯科医療の中で、「歯科麻酔認定医」はどういう意義があり、どう発展していくのかという大きなテーマから、日常臨床の意見・情報交換にいたるまで、これらの問題を共通項とした「歯科麻酔を考える臨床医フォーラム」が、1996年、各地域でご活躍の先生方のご尽力により発足いたしました。

このフォーラムでは、毎年、日本歯科麻酔学会総会時に一般演題とは別枠で数名の先生方にご発表いただき、討論を重ねてまいりました。今年で通算6年目を数えますが、昨年、仙台での第28回日本歯科麻酔学会より正規の演題の中で「認定医セッション」として会期中に発表・討論ができる運びとなりました。

今年の大会テーマは「安全な歯科医療」がキーワードです。認定医セッションの演題としても、歯科麻酔認定医が安全な地域医療の提供にどう貢献できるかを模索しながら、数名の先生方にご発表いただきます。現在、4名の先生の発表が決まっており、お二人は自院で外来全身麻酔を施行しておられる先生で、開業歯科医院での安全な外来全身麻酔に向けて、症例に応じた全身麻酔方法、システム化の工夫、保険算定の実際などご紹介いただきます。主に、障害者を対象とした外来全身麻酔であり、開業歯科医院ならではの課題として、日帰りでの術後管理・マンパワーの不足・設備や経済性などの問題提起もあろうかと思います。もうお一方の先生には、医科からの情報提供に関する内容でご発表いただきます。精神的な緊張を強いられ、時には局所麻酔を含む外科的処置に属する歯科治療では、患者の全身的なリスクの評価や術中管理の良否は、歯科治療時の合併症にも直結する問題です。甘くみれば大事にいたりますし、慎重になりすぎても口腔内の問題がいつまでも解決しません。医科的な情報をどう収集して、どう解釈していくのが合理的なのか、というテーマで取り上げていただきました。他のお一方は「歯科麻酔認定医」としてこれから取り組んでいかなければならない課題をテーマとして、地域歯科医療の立場でご発表いただける先生です。

このセッションでは、一般演題の発表とは少し趣を異にしています。一般演題では、あるテーマに対してはっきりとした一つの結果が導かれていることが必要とされますが、このセッションでは、一つのテーマに対して発表者は明確な結論を要求されるものではありません。それぞれの立場で、情報や取り組みの実際を紹介していただき、フロアの先生方との活発な討論の中で、会場におられるみなさんの問題として、よりよい方向への展開を模索していくのが主旨です。会期中の演題枠の中で、このような討論会が実現することにより、大学に在籍中の先生方にもお聞きいただいて、お互いの情報交換やお知恵拝借の場となり、また高次医療機関と一次医療機関との連携の一助ともなれば、それなりの価値を持ったセッションとして息づいてくるのではないでしょうか。

今回、福岡市での開催ということで、「認定医セッション」の準備をお引き受けいたしました。正規の演題枠での発表としてはまだ2回目であり、準備の手際に不慣れなところも多々ございますが、今度このセッションが前述しましたような発展的な討論会となりますよう取り組んでおります。歯科医療にとって「歯科麻酔認定医」はこれからどう機能し、位置づけられていくのか、は所属を越えた大きなテーマです。所属の如何にかかわらず、数多くの先生方にご参加・討論いただけることを祈念しております。

最後に、このセッションの主旨をご理解いただき、ご協力・ご配慮いただきました九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座・池本清海教授はじめ事務局所先生方に心より感謝いたします。


「歯科麻酔認定医」セッション 10月4日(木)16:00〜17:30(予定)

座長:久保敬司(九州大学大学院歯学研究院口腔顎顔面病態学講座

(開業認定医の中から、コーディネーターを1名お願いする予定です)

歯科麻酔認定医と地域医療
神奈川県平塚市 増井歯科医院
○増井峰夫

当院における安全な麻酔のための工夫
べっぷ歯科医院
◯別府孝洋

一般開業医で可能と思われる日帰り全身麻酔法の検討
静岡県三島市開業
○鳥居 孝

歯科から医科への照会とその回答にみる歯科への理解
福岡県久留米市開業
○佐藤邦彦

11時頃より、フォーラム控室にて4演者と志岐先生を交えて最後の打ち合わせ。 
発表順、話題の振り方など細かい点をチェックできたのは大変幸いでした。 
午後3時50分、いよいよセッションの開始です。予想を超える参加者で会場は満員となりました。 
会場に入りきれない参加者の方もおられたようです。残念。 
2番手、鳥居先生@三島市開業のご発表。
4演者が無事発表終了後、シンポジウムのように壇上に縁者が集まり、久保先生の司会で討論に入ります。 
熱気溢れる討論をしめくくる緒方先生

...非常に内容の濃い、充実したフォーラムセッションとなりました。

 最後に、増井先生の提唱で、下記の「学会への要望」がなされました。