歯科から医科への照会とその回答にみる 歯科への理解 (スライド原稿はこちら)

福岡県久留米市開業

○佐藤邦彦

【目的】 歯科医療供給体制の充実や歯科患者の高齢化、寝たきり者への訪問診療の需要増加に伴い、地域の歯科診療所においても歯科処置時に全身管理を求められる機会が増加した。歯科麻酔認定医はこのような症例に対して安全な歯科医療を提供できることを得意としているが、患者の状態によっては医科の主治医に全身状態についてや病歴、投薬についての情報提供を照会することがある。演者は1986年7月から医科の主治医間に診療情報提供書を用いて情報提供を求め、全身管理の一助としている。これらの情報提供から歯科患者の全身管理を模索する目的でその情報の内容を整理したので報告する。

【対象】 データは過去のカルテに添付した医科への診療情報提供書とその回答書で、1997年1月から2000年12月までの4年間、65件について調査した。

【結果】 演者が発信した診療情報提供書は内科医に向けたものが最も多く、照会の内容は一般全身状態について、特に循環器、代謝性疾患(糖尿病)や脳血管障害の状態、また投薬についてであった。一方、医科からの回答は、概ね期待通りであったものの、中には情報提供というより歯科診療行為の許可のみが記されたものも少なくはなかった。これらの結果から、医科が歯科診療そのものや歯科診療が患者に及ぼす侵襲について理解が乏しく、時には無関心であることが推察された。高齢者や寝たきり者、また、障害者の歯科診療では、医科の情報や診断が安全な歯科診療のために必要なことが多く、診療情報の効果的な交換のためには、医科に対する歯科医療の理     解を求める機会も必要と思われた。

【参考文献】

歯科保険研究会:,診療情報提供料(歯科診療−平成12年版),第1版,医歯薬出版,2000,28-34.
野口政宏,他:全身性疾患と歯科治療の問題点(歯科診療と全身状態評価),第1版,学建書院,1983,61-87.