当院における安全な麻酔のための工夫 (スライド原稿はこちら)

 

福岡県久留米市 べっぷ歯科医院

 ◯別府孝洋

【目的】 当院は平成8年5月に福岡県久留米市にて開業し、障害者の歯科治療のための行動管理として日帰り全身麻酔を行ってきた。ここでは当院における安全な麻酔のための工夫を紹介する。

【方法】 症例の選択:ハイリスクの患者に対しては無理をせず、高次医療機関へ紹介するようにしている。難症例に挑むのではなく、簡単な症例を安全確実に、そして患者にとって快適な麻酔になるよう心掛けている。麻酔前:1〜2週間前に必ず来院させ、全身状態の問診と麻酔日前後の学校施設行事の有無を確認する。さらに前日には電話にて全身状態の問診および絶飲食の指示をおこなう。術前検査:可能な限り行うが、そのストレスが患者の行動変容上不利とみなされる時にはあえて行わない場合もある。その場合は医科主治医への照会と連絡を密にすることで患者に関する情報の収集に勤める。そして麻酔導入時に就眠状態で点滴確保し、同時に採血して末梢血液一般検査および白血球分類を自院で測定し、問題のないことを確認後に筋弛緩薬を投与する。挿管:経鼻的気管内挿管は鼻咽頭粘膜を傷つけない細心の注意を払い、挿管直後に胸部X線写真撮影にて肺野の状況と挿管チューブの位置を確認する。麻酔維持:モニターは血圧、心拍数、心電図、直腸体温、経皮的動脈血酸素飽和度、呼気終末炭酸ガス濃度、呼吸数などである。麻酔深度は必要最小限とし、補助呼吸にて換気を行なう。麻酔終了後:住宅地図にて住居を確認して夜間の緊急な往診に備え、帰宅後および翌朝に連絡をとる。

【結語】 麻酔の安全性を確保するためにはある程度の設備投資とそれを有効に機能させるシステムづくりが重要である。経営規模の小さい当院では十分とは言えない設備に対し、医科との連係などのシステムを充実させることで対応してきた。これまで重大な医療事故は経験していないが、困難な術前検査の問題や、より安全性を高めるための設備の充実など、課題は山積みである。