歯科麻酔認定医と地域医療 スライド原稿はこちら

神奈川県平塚市 増井歯科医院

○増井峰夫

【はじめに】1983年に歯学部を卒業し、歯科医院に就職し、同時に歯科麻酔科において非常勤専攻生として研修をはじめた。以来、地域で診療に従事する歯科医師として様々な経験をし、歯科麻酔医としても多数の経験をした。これらの経験は独立したものではなく、相互に関連したものとなっている。今回は、私自身の経験を通じて、歯科麻酔認定医の地域医療における役割を考えた。

【歯科麻酔を志した動機】卒業時に自身の知識を考えた時、自信を持って患者を扱うことはできないと考えた。保存、補綴の様に日常業務として行うことは、歯科医師としての経験に伴って習得できるので、生命に関わる様な事故への対処および予防の方法を習得することが差し当たりの急務と考え、歯科麻酔学教室の門を叩いた。

【歯科業務と研修の両立】卒業した1983年は、週5日勤務・2日休日という形態が普通であったが、週4日勤務・3日休日という変則的な勤務の出来る診療所を探し、就職した。3日の休日の内の連続する2日間は大学での研修にあて、第1日目に手術予定の入院患者の回診、術前カンファランスに出席し、麻酔法を含めた術中管理法の検討を研修した。2日目は手術室に入り実際の全身管理法を研修させていただいた。この研修形態は多少の変化はあるが14年間続いた。

【日常の歯科診療と歯科麻酔の知識】日常診療において歯科麻酔の技術が必要とされる場面は殆どない。しかし、歯科麻酔の知識は患者の初診時の問診、毎日の治療開始時の体調の確認、治療中の安全確保などに役立っている。

【地域と歯科麻酔】歯科麻酔の知識・技術を習得している歯科医師はまだ少ない。そのため、歯科麻酔認定医は地域の歯科医師の間では、ある種の専門家として遇される。私自身、障害者に対する歯科診療、在宅有病者への往診診療などに地域として対応する事業に、キーマンとして参加してきた。また、他の歯科医療機関から有病者の歯科診療を依頼されるなどで、地域医療においても一定の役割を果たしてきたと自負している。

【最後に】従来、大学病院などの大規模診療施設が歯科麻酔認定医の活躍の場として考えられていた。このことは、麻酔医は患者の管理が業務であり、単独では処置が出来ないことから当然のことであったのであろう。しかし、歯科麻酔認定医が麻酔医としてではなく「麻酔の知識を有する歯科医師」となる時、活躍の場を地域医療へと広げることができる。今後は、この方面おいても歯科麻酔認定医の活躍を期待したい。