「澤荼、その夢なのですね」 澤荼が頷いた。そして、 「そして、最後に出てきたのが堂士お兄様なの」 と言った。堂士は頷く。それは、自分でも気づいた。確かにあれは、自分だ。 そして、あの女の人は? 堂士はシルエットだけの彼女を思い出していた。波豆と名乗っていた彼女に、どこかで会っているのだろうか。それとも会ったこともない? 「堂士お兄様?」 澤荼が自分を見つめていた。堂士は澤荼の布団を直すと、 「さあ、澤荼、今度こそお休みなさい」 と言って笑った。澤荼が、 「お休みなさい」 と言って笑った。堂士は頷いて、澤荼が目を閉じたのを見て立ち上がる。 そして、堂士の邑楽家への今夜の秘かな訪問は終わったのだった。
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