澤荼が一人しゃがんでいる。夕暮れの公園の砂場であった。澤荼は砂の城をこつこつと作っていた。その砂の城に長い陰が伸びて、澤荼は顔を上げた。逆光を受けて、顔が見えない。だが、髪の長い女の人だということは判る。 「さあ、見つけたわ。あなたなのね、私の邪魔をするのは。子供といっても、私の、波豆の邪魔をする者は誰であっても許しません。大丈夫よ、私が苦しませずに殺してあげるから。逃げたら苦しくなるだけよ。ね、いい子だから、そこを動かないことね」 澤荼は顔を強張らせて、彼女を見上げていた。動くな、と言われる前に、澤荼は硬直していた。彼女が砂の城を踏み潰す。その手が澤荼に伸びた。だが、澤荼を掴みはしなかった。 「また出てきたわね。あなたは誰なの? 私を、波豆をここまで苦しめるのは、誰なの?」 女の人は、澤荼の後ろを見ていた。そこにいたのは、一人の青年。そして、彼女は揺らめくように消えていった。 澤荼が後ろを振り向く。澤荼にはそれが誰だか判っていた。 そして、二人は同時に目を覚ました。
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