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とにかく、第一印象は子供ながらにして、回りを引き込ませるその容姿。美しい、というわけではなく、人の心を和ませるものを持っている、ということなのだ。そして、その僅かに鳶色がかった瞳。芳宜が理知的な、と評したその瞳に、一生も心を奪われた。そして、彼も自分を見つめていることに気づいたのだ。
諸見は初めて永覚を見た次の日、運転手を解雇した。そして、自分の付き人に足る者を捜していた。
背もさほど高くなく、人込みにまぎれても目立たない容姿で、それなのに何故か諸見は彼に目を奪われた。年の頃は、20代前半だろうか。ラフなジャケットにジーパン、髪の毛は諸見と同じように短く刈り込んでいた。諸見は彼をジッと見つめていた。そして、相手も自分を見つめていることに気づいた。
諸見はさりげなく彼に近づいた。そして一生は近づいてくる彼を待った。
それは、出会うべくして出会った二人なのだ。諸見には一生が必要だったし、一生は諸見に出会うことによって人生を満喫出来たのだ。互いに愛情を持って接することが出来たし、(それは諸見にとって石蕗に対する愛情とは違うが)そして、二人ともそのことに関しては、満足する人生を送ることが出来たのだ。
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