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 13代当麻を継ぐべき諸見と、19代邑楽を継ぐ永覚が知り合えたのは、諸見がそれを望んだからに他ならない。でなければ、当麻と邑楽が出会うことは、一方の死を意味することのだ。もちろん、当麻が死ぬことはあり得ない。死ななければならないのは、邑楽のほうなのだ。それが、今までの歴史であった。
 諸見は当麻を継がなかった。そう考えると、この時に当麻は邑楽に出会っていないのだ。
 諸見は永覚に会った。今までの流れを追随するのではなく、新しい流れに変えるために。それを諸見は望んでいたが、永覚が望んでいると確信して、ではなかった。だからこれは、一つの賭なのだ。
 永覚は諸見より少し年上であった。だから、たとえ学校が一緒でもほとんど知り合う機会がなかっただろう。そして、二人は学校が一緒ではなく、家も近くではなかった。


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