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 翌日は、快晴であった。雪が乱反射で眩しいぐらいに輝いていた。
 堂士は窓の曇りを指でこする。
(今日は何をしよう)
 堂士は昨夜、康裕が見せてくれた写真を思い出した。いつも見ている風景が、写真になるとあれほどに変わるのか、と不思議だった。
 階下で包丁の音が響いている。石蕗が朝食の用意をしているのだろう。堂士は、時計を見てまだ早いかなと思いながら、着替えを済ませて階下に下りた。
「お母さん」
 台所のドアを開けて堂士は石蕗を呼んだ。
「お早う、鳶尾」
 石蕗がエプロン姿で後ろを向いた。
「どうしたの、ずいぶんと早いわね。まだ寝ていてもいい時間よ」
 石蕗が笑いながら言った。堂士はドアを閉めて、石蕗の側に寄った。
「うん。でも、目が覚めてしまったから……。それに今日は早くお母さんに会ってみたかったんだ」
 クスリと笑って、石蕗が堂士の鼻を指先で突っ付いた。
「おかしな子ね」
 堂士も母親の笑いに応えた。
「じゃあ、ここに座っていてね」
 石蕗は食卓の側の椅子を指さした。
「お母さん、昨日の見せてもらった写真、素敵だったね」
「ええ、そうね」
 堂士はそれを思い出してうっとりした。
「僕も写真を撮ってみたいな……。お父さん、許してくれるかな」
 石蕗がくるりと振り向いた。
「きっと大丈夫よ。そんなに気に入ったの」
「うん」
 堂士はにっこり笑った。
 やがて、他の人間も起きてきた。


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