御母衣家の車は、まだ走り続けていた。
「あ、ゆみ子さん」
 冬野が突然叫んだ。
「はい」
「あの車を追ってちょうだい」
 冬野が指を差したのは芳宜の乗っている車である。
「判りました」
 ゆみ子は何も聞かずに車線を変更した。
(当麻家の芳宜さんが一緒に乗っている人は誰かしら)
 芳宜のほうは擦れ違った時によく見えた。だが、もう一人は後ろ姿しか判らない。
 御母衣家の車はそのまま当麻家の車を追いかけていた。その二台を追っている車があろうことに冬野は気がつかなかった。


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