粃は目の前の香散見を無視するように歩き出した。今は誰とも喋りたくなかった。 「お父様……」 と香散見は粃を呼び止めようとしたが、粃の回りの見えざる壁に圧倒された。 (綾歌とのお話で何かあったのでしょうか) 香散見は綾歌の部屋の扉をそう思いながら見つめ続けた。