当麻家。 香散見は綾歌の部屋の前に立っていた。中に粃が入っていったのを見てから、ずっとその前に立っているのであった。 粃は香散見を決して綾歌に近づけなかった。香散見は綾歌の姿すら見たことがないのだ。香散見はそれを気に入らないのだ。 (何故、お父様は綾歌に会わせてくださらないのでしょうか) 香散見はそれを知りたいと思った。だから今日こそは、と部屋の前で粃を待ち続けていた。