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「お父様、本当にお兄様には困ります」
香散見の姿は書斎にあった。
「良いではないか。わしにはお前がいる」
粃は香散見を手招いた。
「それよりも招くことにした」
「招く?」
香散見がソファに座りながら言った。粃がその隣に座る。
「いつです」
香散見は嬉しげに瞳を輝かせた。その首を粃が掴んだ。
「嬉しいか、香散見。そのような瞳をされると、わしは嫉妬に狂いそうじゃ」
粃がギロッと睨んだ。
「ま、お父様ったら、ご冗談を」
そう言いながら、香散見は粃の胸元に手を滑り込ませた。
「明日。来るかどうかは判らぬが」
粃は後ろから香散見の首筋に唇を当てた。
「是非、いらして欲しいですわ。……お父様、では、明日のために」
香散見の手が粃を掴んだ。香散見が振り向いて粃と唇を合わせた。その間も粃の手はうごめいていた。
「お父様、楽しみですわ」
香散見は喜びに満ち溢れた表情で言った。二人の体が光に満ちた。
「どのような方なのか……」
香散見の恍惚とした声が響いた。
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