クスクス、と後ろで笑い声がした。ハッと綴喜は振り返る。 「終わりましたか」 にこやかに笑って近づいてくるのは、2代当麻の武生であった。 「これで、波豆は消滅し、《力》のある邪魔者はいなくなりましたね。もはや、夢見の中では、邑楽に勝てる者はいませんよ」 武生は綴喜の側に立ち止まった。淡河の側にひざまずいていた綴喜に、武生は手を差し延べた。 「ご苦労さまでしたね、5代邑楽よ」 そう言われて、ホッと綴喜はその手を取ろうとした。 「あなたも、もはや用なしです」 ハッと綴喜は後ろへ跳び下がった。 「何を……」 咎めようとする余裕を与えずに、武生の手のひらが白く輝いた。 「ちっ、逃がしたか」 白く輝いた光が消え去ると、そこには、武生の姿しかなかった。 「まあ、いいでしょう。波豆は消滅し、邑楽も当麻には及びません。邑楽の夢見の《力》については、ゆっくりと手に入れることにしましょう。淡河に妹がいるとは初耳でしたが、波豆が再び目覚めるまでには、当麻は揺るぎないものになっているでしょう」 武生はクスクスと笑った。
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