伝十郎は堀部と別れて片頬で少し笑った。
確かに惚れているのは四郎の腕だ。もちろん、それを目の当たりにしてはいないが、彼の力量を伝十郎が読むことは容易い。
(ただ、無陰刀の持ち主に会いたかっただけなのに、あれほどの魅力があるとは思わなかったな)
今はまだ立ち合おうとは思わない。その時期はだがいずれ来る。
伝十郎が生きている証とするのは、戦うことでしか現すことが出来ないのだ。
今までは殺し合いしかしたことがない。だが、四郎となら本当の立ち合いをすることが出来るのではないだろうか。
それを伝十郎は知らない内に願っていたのだ。
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