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「そいつがそんなに好きなのか」
女はクリスマス・カクタスの鉢の前でにっこりと笑った。
「好きよ」
そう言って男の側に駆け寄る。
「きっと、あなたも花が咲けば、きっと好きになる」
「ずいぶんと、自信ありげだな」
男が面白そうに笑った。
「賭けてもいいわ」
女が楽しそうに言った。男は女を一瞬不思議そうに見つめて、
「バカだな」
と言った。
「そう? 何故?」
男は答えずに窓辺に座った。その前に置かれたクリスマス・カクタスの鉢植え。
ただの緑の肉厚の葉。これにどんな花が咲いたとしても、好きになるとは思えない。
花を愛でるなど、自分には似合わない。
「クリスマスにはね、絶対咲くの。クリスマス・カクタスは、クリスマスに咲いて、そして、クリスマスには雪が降る」
女が歌うように言った。男は黙って通りを眺めた。
「あなたも絶対好きになる」
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