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「ねえ、おじいちゃま、どうして、私にはおじいちゃまと同じ力がないの?」
蓮は膝の上に座っている桂の頭を撫でながら笑った。
「だって、おじいちゃまと同じ力があったら、みんなとお話しが出来るのに」
「桂、桐生の家では代々違う力が備わるんだよ。そして、それはその時に、その人に必要だから備わるんだ。必要ないものは与えられないんだよ」
桂は蓮を見上げて、激しく頭を振った。
「いや! 私もおじいちゃまと同じ力が欲しい。だって、私は誰とも話せないんだもの。姿も見えないんだもの。私だけに何の力もないんだもの」
蓮は桂の頬を挟んだ。
「桂、よくお聞き。お前にはお前にしかないものがある。だから、泣くのはお止し。確かに今は何も判らないだろうけどね、きっと、お前が大きくなったら、その意味が判るだろうよ」
桂はくすん、と鼻をすすり上げた。
「だって……」
またべそをかきそうな桂に、蓮は微笑む。
「私の大事な桂、じゃあ、私からプレゼントをあげよう。お前が十六歳になる日に、それをあげよう。だから今は、泣くのはお止し」
桂が涙を拭って蓮を見上げる。
「私の十六歳の誕生日に?」
「そう、約束だよ」
蓮が桂の頭を撫でながら言った。
「約束ね」
桂が小さく笑った。
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