◆◆
御荘たちが東京へやってきたのは、それから二日後のことであった。
「もうやりあったのか」
御荘はチロリと八坂と八浜を見た。二人は首を竦める。御荘たちが出てくるまでは、表立った行動は慎むようにと言われていたのだ。だが、御荘はそれ以上は責めなかった。
「お前たちが二人一緒での攻撃をすることを相手に判ってしまったことは、問題だな。出雲の頓原か。奴は越知と檮原を倒した張本人だな。ふーむ」
御荘は松前、室戸、八坂、八浜とジッとそれぞれの顔を見渡した。
「一人ずつ倒しておきたいとは思うが、我らの当初の目的を忘れてはならない。我らは布城崇を奈半利に連れて帰ることが、今回の使命だ。彼を手に入れた後で、連中はゆっくりと料理すればよい」
「でも、布城崇にはあの連中たちがつかず離れず一緒にいますね」
松前がにっこりと笑って、御荘に言う。それは倒していいんでしょ、と松前の目が語っていた。御荘がフッと笑って松前を見た。
「それは臨機応変だ」
松前はその答を聞いてまたにっこりと笑った。
「私と八坂、八浜で行きますわ」
そう言っていきなり立ち上がる。その時、空間が歪んで紅の球体が現れた。物部であった。五人は頭を垂れる。
「御荘、頓原を生け捕りに出来るか」
物部の問い掛けに御荘は眉をひそめた。
「生け捕り……ですか?」
物部は頷いた。
「双海の提案だ。出雲の王、宍道に対する計画の一環でな。頓原を宍道に対する取り引きの材料として使いたいのだ。布城崇はもちろんだが、頓原も生きたまま手に入れたい。どうだ、可能か?」
御荘は考え込んだ。王の命令は絶対である。だが、だからといって、御荘は出来もしないことに承諾の返事をすることはなかった。つまり、可能なことだけを可能だと言うのだ。
「判りました」
と御荘は返事をした。つまり、可能である、と返事をしたのであった。物部は満足げに頷いて、紅の球体を消した。
「松前」
と御荘は松前のほうを向いた。
「八坂、八浜とお前が、巧く連係すれば可能だぞ。要は、布城崇が頓原とだけいる時を狙うのだ。いいか」
御荘はみなに計画を話しだした。はたしてそれが可能なのか。御荘の胸のうちでは、すでに二人は奈半利の手に落ちていたのだ。
←戻る・続く→