◆
出雲五真将の四人はその部屋の中で待っていた。やがて、その中心に刈安の球体が現れる。頓原を除く三人は、深く頭を下げた。
「待たせたかな」
刈安の球体の中に現れたのは、宍道であった。
「いいえ」
と仁多が言った。
「私の考えを言おう。出雲の中のことは心配せずともよい。お前たちは東京に出てきている奈半利を倒し、あと奈半利の王国の場所を探れ。そして一気に叩き潰す。頼んだぞ」
宍道がみなを見渡しながら言った。その目が頓原に止まる。頓原は宍道のほうを見ずに、心ここにあらず、という表情をしていた。宍道は仁多を見た。
「ではまた連絡する」
と言って、宍道は刈安の球体から消え、刈安の球体も揺らめいて消えた。
四人は自分の部屋へと帰っていった。頓原も部屋に戻る。そして、椅子にどかっと座った。その目の前に刈安の球体が現れたのは、すぐのことであった。
「宍道」
驚いて頓原は宍道を見つめた。
「どうしたんだ」
頓原は無理に笑いを浮かべて言った。宍道がまじまじと頓原を見つめる。
「頓原、何を思い悩んでいる。昨日は普段のお前だったし、今日のうちに何か考えることがあったのか」
「いや、別に……」
と頓原は宍道から目を逸らせた。宍道は、
「そうか」
と言うと、
「何かあったら、私に知らせてくれ」
と付け加えて球体ごと消え去った。頓原は刈安の球体の消えた空間をしばらくジッと見つめていた。
宍道自身も目の前に浮かべた刈安の球体が消えた後を、ジッと見つめていた。頓原のことは、幼い頃から知っている宍道であった。頓原の態度を見ていると、何か隠し事をしているのが判る。だから、宍道としては言って欲しかった。一人で思い悩むより、自分に相談して欲しかったのだ。だが頓原としては、宍道には言えないことだったのだろう。それが何かを本当に知りたければ、命令すれば頓原は答えてくれるだろう。だがそれを聞いた後、二人の関係は、今までの状態を保つことは出来ないのだ。
「頓原……何があったんだ」
宍道は頓原から言ってくるのを待つしかなかった。
←戻る・続く→