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檮原の前に、青磁色の球体がいきなり現れた。
「指令は果たしたんやけど、二人目の出雲五真将に会ってん。せやけど、僕の《力》やと、奴を倒せん。奴も僕を倒せんのやけど。檮原様、祖谷に奴をあてがってやるのも、一計やと思うけど?」
相変わらずふわふわと浮いた状態で、越知は言った。
「相手は船通とゆー男。たぶん、祖谷の好みやね」
檮原が頷いた。
「手持ちの駒を最大限に利用せねばならぬからな。祖谷もこの間は失敗して欲求不満になっておろう」
越知は檮原をジッと見つめた。
「檮原様、出雲のほうはそれでいいとして、問題の布城崇はどうなってんねん」
「越知、それに関しては、お前が懸念する必要はない」
檮原は問答無用の口調でそう言った。越知は何も言えぬまま、檮原を見つめることしか出来なかった。
「ま、せやったら、俺は次の出雲五真将を始末することにしょーか」
越知がそう言って、青磁色の球体ごとすうっと消えた。檮原がその空間を見つめていた。今は、越知や出雲のことを考えてはいなかった。檮原の頭の中は、麻績の、璃寛のことだけで占められていたのだ。
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