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「思い出せ……。さあ、……を」
朝熊の後ろから声が聞こえた。朝熊は振り向こうとして、体が動かなかった。
「お前は、我らの仲間だ。……の」
「何?」
朝熊は必死に振り向こうとした。だが、それは叶えられなかったし、声の肝心なところは聞こえなかった。
そして、ハッと目が覚めた。
「夢? 夢だったのか」
そう、夢であった。朝熊は額に滲んだ汗を手の甲で拭った。
「夢……」
本当に、夢だったのだろうか、と朝熊はふと思った。夢にしては、現実過ぎ、現実にしては夢のようであった。ただ、それが意味を持つと考えたくはない朝熊であった。何なのか、何故なのか、朝熊には判らない。
「うん……朝熊」
倭が目を覚まして、朝熊を見つめた。
「どうかしたのか」
朝熊は起き上がって、カーテンをバッと開いた。朝の光がサアッと射してくる。
「いや、ただの夢だ」
倭を振り向いて、朝熊は言った。
「そうか」
と倭が言って、再び目を閉じた。
「ただの夢だ」
自分にすら聞こえないような呟きで、もう一度朝熊が言った。
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