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出雲の王国。
出雲の王は、木次53歳。子供は、宍道23歳の一人だけであった。
木次、宍道の前には五人の男女がひざまずいていた。出雲五真将と呼ばれている人々であった。仁多、頓原、船通が男、斐川、潜戸が女であった。
出雲五真将が5人揃うことは、近頃では珍しかった。それは、《力》のある者が少なくなってきたことと、平均寿命が低くなったこと、そしてその必要性が薄れてきたことが原因であった。
「君命である」
総領である宍道が厳かな口調で言った。5人はさらに深く頭を下げた。
「仁多、他の者を率いて、東京へ向かえ。今度こそ、奈半利を滅ぼすのだ。奈半利は、我らのカスのような存在。奈半利のほとんどが、出雲から出ていることを考えると、他の一族に顔向けが出来ぬ。いいか、奈半利は最初からなかったものとするのだ」
「は」
仁多が低く答えた。他の四人は仁多の返事に合わせて緊張した。
「東京の私立陬生学園高等部1年に、布城崇という者がいる。奴を見張れ。奴は奈半利ではないが、奈半利が奴を手に入れようとしているという話だ」
宍道はそこで一息入れて、
「仁多、船通、潜戸、斐川、頓原、任せたぞ」
と言った。仁多が少し頭を上げて、
「君命、謹んでお受けします」
と言いつつ頭を垂れた。木次と宍道は出ていった。この間、木次は一言も発しなかった。
二人が出ていって、最初に仁多が立ち上がる。次いで、他の4人が次々と立ち上がった。
「東京かあー」
頓原がふわあっと欠伸しながら言った。それを仁多が睨んで、
「出雲五真将足る誇りを持って、君命を果たそう。布城崇には、私がまず接触してみよう。他の者は随時対応するようにする。目的は、奈半利を滅ぼすことだ」
と一人一人に目を向けながら言った。頓原以外は、神妙に聞いていた。
そして、出雲五真将も東京へやってきたのだ。
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