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実験:産卵に適したマットはどれ?

 2000年9月10日

 昨年「カブトムシ君と遊ぼう!」の「幼虫は何の餌を選ぶのか!大実験」等で、幼虫のエサとしてマットを比較した実験をしたわけですが、その実験についてヤマヒサの開発担当の方からコメントをいただき、さらに産卵実験もしてはどうかとアドバイスを頂きました。成虫を飼育していたマットはマルカンの「若葉」に他の何種類かのマットを混ぜたものを使用していたわけですが、他のマットではどうなのかとても気になっていたので、今年の夏はカブトムシが産卵し孵化するのに適したマットは何か調べてみることにしました。

 先に結果を書いてしまうと、実は「よくわからなかった」のです。(^_^;) 実験の方法がよくなかったのが「よくわからない」ことになってしまった原因なのですが、その顛末をここで紹介しましょう。

実験方法その1

 まず、3月下旬に羽化したメスが1頭いましたので、そのメスで実験することにしました。たった1頭のメスでどうやって実験したらいいのか・・・ちょっと悩んだのですが、次のような方法でやってみることにしました。

 3日間ほどオスと同居してもらったメスを単独で中サイズのケースに入れます。マットは厚さ10cm以上入れることにします。

 1週間から10日ぐらい経過したら、違う種類のマットを入れた別ケースにメスを移します。メスを出したケースは3週間ほど経過してからマットの中に幼虫が何頭いるか確認します。

 試したマットは以下の3種類です。

  1. JTアグリス 腐葉土

     全国どこでも入手可能なブランドで、昆虫飼育に安心して使える、実績のある腐葉土です。

  2. ミタニ「くぬぎ純太くん」

     これも全国で入手可能なブランド。クヌギやナラの木材(たぶん椎茸ホダ木の廃材)を粉砕したものです。

  3. ヤマヒサ「昆虫マット」(「グレートカブトくん」)

     広葉樹の幹の一部分だけを削って発酵させたマット。落ち葉は入っていませんので腐葉土とは違います。(一応全国ブランドなんですが・・・。)

 結果はこのようになりました。

マット 入れていた期間 回収
カブトくん 4月17日 〜 4月23日
純太くん 4月23日 〜 5月2日 幼虫4/卵7
JT腐葉土 5月2日 〜 5月12日
カブトくん 5月12日 〜 5月30日

 ガ〜ン・・・って感じですね、これは。あまりに結果がかたよりすぎです。そういうわけで、6月上旬に羽化した3頭のメスを使って再度実験してみることにしました。

実験方法その2

 とにかくヤマヒサの「グレートカブトくん」で産卵、孵化することを実証したかったので、オス1頭、メス2頭を1つのケースでしばらく飼育することにしました。(残りのメス1頭は、近所の子供が欲しいと言っていたので処女のままでいてもらいます。)

 半月後、この2頭のメスはそれぞれ別のケースに移し1頭ずつ、これまた半月の間飼育しました。片方はJT腐葉土、もう片方はミタニの「くぬぎのいいとこ」です。(「純太くん」は産卵したのを確認済みなので「いいとこ」に切り替えました。)

 結果は以下のとおりです。

マット 入れていた期間 回収
カブトくん 6月30日 〜 7月16日 幼虫10/卵5
いいとこ 7月16日 〜 8月1日 幼虫1/卵0
JT腐葉土 7月16日 〜 8月1日 幼虫6/卵5

 とりあえず「グレートカブトくん」や腐葉土でも無事に産卵、孵化することが確認できました。「くぬぎのいいとこ」の成績が悪かったのがちょっと残念ですが。

実験結果について

 1頭のメスが産む卵の数は、個体差があると言われています。条件を同じにしてもたくさん産むメスと少ししか産まないメスがいるということらしいです。そう考えると、「産卵に最も適したマット」を探る意味で実験をするには複数のメスを同じ条件にする必要がありそうです。最低でも3頭ずつ、できれば5頭ずつ同じ条件にして産卵させるわけです。もしそういう方法で3種類のマットを比較する場合、9頭から15頭のメスに産卵させることになります。しかし実験終了後に発生する幼虫のことを考えると、とても私個人でそういう実験はできそうにありませんし、私の手元にそれだけの数のメスがいません。ペットショップ等で成虫を購入すれば個体数は確保できますが、それらの成虫は幼虫飼育時の条件が手元の個体と違ってしまいます。もしかしたら幼虫時代の条件によって産卵数が違うかもしれないという可能性は否定できないでしょう。

 以上のことを考えて「産卵に最も適したマット」を調べるというよりも「各マットでメスがきちんと産卵し、孵化するかどうかを確認する」という意味での実験ということになってしまいました。

 それにしても、4〜5月の実験で「くぬぎ純太くん」以外のマットから幼虫が得られなかったというのが驚きでした。最初の「グレートカブトくん」に産卵していなかったのはどうしてでしょう? もしかしたら交尾してすぐには産卵しないのかとも思います。それとも羽化後の経過日数が少なくて産卵に十分なほどメスが成熟していなかったのか…とも考えられます。ちなみにこのメスが羽化したのは3月24日ですが。

 「くぬぎ純太くん」の次にメスを入れていた腐葉土について考えてみます。腐葉土で孵化できることは7月の実験で証明されていますので、まったく産卵しなかったのだと思いますが、いきなり全然違う質のマットになったので産卵をやめてしまったのでしょうか。7月上旬に「グレートカブトくん」で産卵させ腐葉土に移したメスがちゃんと産卵していますが「くぬぎのいいとこ」に移したメスのほうはほとんど産卵していません。いや、もしかしたら産卵しても孵化しなかったのかも、それに腐葉土に移したほうのメスばかりが「グレートカブトくん」で産卵していた可能性もありますので、この結果だけで判断することはできませんが、見た目にも「グレートカブトくん」のほうが腐葉土に近いような気がします。そして、7月に産卵させたメスは2頭とも、8月に入って未発酵のマットに移したあとはまったく産卵していないようなので、マットの質などの環境変化によって産卵をやめてしまう可能性は大きいようです。

 結果としてわかったことは、たくさん卵を産ませてたかったらマットの種類を途中で変更しないことだということだけのようで、幼虫がそれなりに育つマットなら大丈夫のようですね。あ、そうだ「くぬぎのいいとこ」での産卵・孵化が確認とれていません。できれば孵化してすぐに栄養価の高いマットを食べさせたほうが大きく育つことが予想できますので、これはぜひ確認したいところです。


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