審美歯科の基礎
歯科における審美障害
歯科における審美障害を大別すると次の様な項目が挙げられます。
- 歯の欠損
- 歯並び
- 歯の形態
- 歯の色
- 歯肉の問題
- スマイルの不調和
これらの問題が単独、あるいは複合的に生じている場合があります。
歯の欠損

上顎の前歯または犬歯に欠損がある場合、その部分がダイレクトに見えてしまうため、審美的には大きな問題とります。下顎の前歯でも見えてしまいますが、上顎の前歯に比べれば目立ちません。小臼歯の欠損はスマイル状態で欠損が見えてしまいますが、会話ぐらいでは見えません。大臼歯の欠損は他人からはほとんど見えません。(口が大きい人はでは見える場合もあります。
歯列に欠損がある場合、審美的観点からも、機能的観点からも補綴(欠損部を補う治療)が必要となります。
歯並び

歯列不正については当サイトの「矯正歯科の知識」のなかで詳しく触れておりますので、参照して下さい。

前歯部に叢生(そうせい;歯列の入り乱れ)があったり犬歯の転位があったりするとスマイル時のイメージが悪くなります。右側の症例では歯列不正に加えて、色や透明感が自然の歯とは違う差し歯入っているため審美性を損ねています。
極端な上顎前突があったりすると閉口時にも口唇の突出や、口輪筋の緊張が起こります。左の症例では上顎の前歯が極度に突出しているため上口唇が突出して下口唇の下からオトガイにかけて緊張している様子が分かります。
歯の形態

歯の形態も審美性に影響を与えます。歯の形態変化を起こす要因としては、
- 虫歯などによる歯の崩壊変形
- 外傷による歯の破折
- 先天的な歯の形態異常
などがあります。虫歯による歯の崩壊変形は別として、上顎の側切歯が先天的に矮小化する例をしばしば見受けます。その他にも「歯の形態が多少角ばっていて顔にマッチしないので形態を変えて欲しい」といった要望をもった患者様もいらっしゃいます。
歯の変色

歯の変色は歯科の審美障害の中では最も大きな問題の一つといえます。明眸皓歯の言葉にある様に白く輝く歯が理想といえますが、様々な理由で歯の変色が起こります。
- 虫歯による歯の変色
- 修復物(詰物など)補綴物(差し歯など)自体の変色
- 金属の露出
- 形成不全など先天的変色
- テトラサイクリングなの薬物を歯の形成期に過剰摂取したことによる変色
- タバコ、コーヒーなど嗜好品による色素沈着による変色
- 神経をとってしまったことによる歯自体の変色
- フッ素の過剰摂取による変色(日本ではまれ)
などがあります。
また変色といっても様々なタイプがあります。虫歯が黒っぽくみえるとか、形成不全などによりその歯あるいはその部分が周辺と比べて明らかに違うものは明らかな審美障害となります。その他にグレーゾーンの障害もあります。
- 全般にやや黄ばみが強い
- 差し歯の色は白ではあるが、隣在歯の色とマッチしていない。
- 金属の露出があるが、場所が小臼歯より後で、あまり目立たない。
といったものがあります。審美性は主観的な面もありますので、それが治療の対象となるかどうかは、患者様と相談の上決めなくてはなりません。
歯肉の問題

歯肉にも様々な審美障害が起こりえます。
歯肉の変色
健康な歯肉は淡いピンク色をしていますが、歯周病に罹患した歯肉は、発赤あるいは紫色になり見た目が悪くなります。ヘビースモーカーの患者さんの歯肉もどす黒く、独特の色を呈します。その他に、メラニン色素の沈着により歯肉が茶色っぽくみえる場合もあります。土台に入れた金属の腐蝕が進むと銀イオンなどが溶け出して歯質を変色させてしまいそれが歯肉から透けて黒っぽくみえたり、歯肉そのものに浸透して歯肉を変色させてしまう場合があります。
歯肉の形態
健康な歯肉は歯と歯の間の付け根にをきちんと生めていますが、歯周病や不良補綴物ににより退縮してしまうと、隙間ができていまいます。こうした隙間は外見的には黒くみえてしまいます。