事例5

業研究では他の研究機関に出向していた学生。実は、他大学の農学部を一度卒業しており、それでもなお基礎の発生生物学をどうしても研究したくて学士入学してきた。出向先の研究機関では、先輩にあたる上司の傍若無人な態度の苦情がその学生のところに集まり、困っていた。修士で出向が終わり大学に戻ったが、その研究機関の上司が偶然に助手として戻ってきて、そのまま指導教官となってしまう。無責任な態度の数多くがたびかさなる(助手着任が決まった時点で大学に持ち帰るための機具を研究所で買い込んで顰蹙を買う、といった類の子供じみた問題行為を重ねていた。並みの神経ではこれには耐えられまい)。


解決:
 このようなところでは自分はまったくむいていない、と修士一年で退学を決意。やめるにあたって、他の研究室の教員に「自分のような不幸な学生がもうでないように、修士の入学試験ではもっとこまかく学生の適正をみたほうがいいと思う」と語っていった。この学生は、結局最終的には「自分はむいていない」と思ったのである。

 事例4と同じ研究室の修士一年の例である。結局、この研究室ではたった一年で二人の修士一年が辞めたことになる。残念なことに、研究室内では彼らがやめたことについての説明は教員からはまったくなされなかった。また、学生で彼らが辞めたことを気にかけた人間もほんの数名だけだった。無関心の闇は教員ばかりでなく、その手の教員と「うまくやっていけるようになってしまった」学生達の心をもむしばんでいるのである。この学生も、退学時は、とりあえずやめることが最優先事項だったのだが、やめて気持ちを整理した結果、現在は新しい目標をもって他の学校にかよっている。