事例3

学生にきちんとした基礎を教えることもせずに「こんなこともわからないのか」、「なにをいっても理解できないのならやめてしまえ」といった暴言を繰り返した。そもそもその学生の大学院入学にあたっては、その学生が祖国で受けている教育と、受け入れ側の要求する水準との間にひらきがあることを十分に理解していたはずであった。自分が「人手は多い方がいいから」と受け入れた癖に「これができないのなら国へかえれ」、「べつに私があなたに日本にいてほしいわけではないのだからできないならかえってもらっても自分はいっこうにこまらない」などと、事例2と同様に、他の人が周囲にいない時をみはからっては、おいつめるようなことをしていた。


解決:
 実は事例2と同じ事例、同じ教員である。その内容のあまりのひどさのため項を分けた。「人手は多いほうがいいから」、という理由で指導も出来ない人間が学生をとる、というところに問題がある。さらにいえば、大学院の指導を直接おこなうことのできない助手の立場で、大学の慣例と自治を狡猾にも悪用しようとしたという問題も重なる。実際、この態度はセクハラ、アカハラの事例であげられるいわゆる「猫の手人事」と近い性質のものであり、それはこの助手がマイノリティの人権をはじめから考慮していないことの証でもある。学生は「教育を受ける」ために大学にくる、という大切な事実が頭からすっぽりと欠落しており、単に「自分のための手数がほしい」というだけの理由で一人の留学生の人生をかるはずみに左右してしまおうとするその態度には、この助手の教員としての不的確きわまりない資質、そして、一個の人間として社会人として決して容認されえない意識の問題があるのだといえる。教育という観点はこの教員の頭の中にはなく、ただ、自分にとって都合良く動く奴隷がほしかっただけ、ということなのだから。この教員、非常勤として他大学の学生に講義をおこなったりもしているのだが・・・。

 もちろん、ここに上げたような問題だけではなかった。プライバシーに関わること等、これ以上のさまざまなハラスメントがこの助手によって執拗に繰り返されていたのである。この場合、偶然にもその問題教員が研究室のボスではなく、また、相談に真摯に対応してくれる教員が別にいたことが学生を救ったわけだが、他の例にあるように、研究室のボス自身に問題があった場合、学生は孤立無援と化す。分野は違うが、ある私立大学では研究室で自殺した例もあるのである(ちなみに、この例ではその感電死の後始末を助手が研究室の学部生にやらせていた)。