空撮テク(11) 機体へのカメラ装着・一眼レフ編




 以前、空撮テク(8)でキャノピーへのカメラ装着について紹介しました。そのときは小型軽量のコンパクトカメラだったのですが、今回は一眼レフの装着についての話です。



 200〜300グラム程度と軽量なコンパクトカメラに比べ、一眼レフはボディだけでも500グラム近くあり、それにレンズが加わりますから結構な重さになります。空撮装備が飛行性能に及ぼす影響や、ライズアップの容易さを考えると、できるだけ軽く、しかも小型のカメラを使用するべきなのは当然です。
 具体的な一眼レフボディの名前を挙げれば、ペンタックスなら*istやMZシリーズ、キャノンならEOS Kissシリーズ、ニコンならUシリーズ、コニカミノルタならαSweetシリーズになります。一眼レフのクラスで言えばいわゆる入門機にあたりますが、重くて大きくて高い上級機に比べて写りが悪いというわけではありません。逆にこのクラスは上級機にはない機能、たとえば赤外線リモコンが付属しているものがありますから、まさに今回のような空撮にはうってつけです。

 このリモコンというのが結構ネックで、離れた所にあるカメラのシャッターをいかに切るかを最初に考える必要があります。考えられる方法をざっと挙げると、

リモコン付きのカメラを使う
これがいちばん簡単な方法です。ただし、一眼レフ入門機に付属するリモコンというのはコンパクトカメラと同じく赤外線式で、到達距離にいまひとつ不安があります。またキャノピーへ装着する器具を製作するにあたり、赤外線の受光窓を遮らないように設計する必要があります。これが結構面倒そうです。

オプションのリモコンを使う
リモコンが純正品として用意されているメーカーもあります。たとえばキャノンニコンで用意されています。ただしこれらのリモコンは到達距離は長いものの、赤外線を使用しているようですし、かなり高価です。

無線リモコンを自作する
近頃のAFカメラのレリーズは単なる電気接点ですから、遠方から電気的にon/offできる接点をもつリモコンを自作するという手があります。以前、赤外線リモコンの自作について書きましたが、受信機がすこし大きく重くなるのを許容できるなら、赤外線よりも電波を使った「無線リモコン」の方がベターです。赤外線とは違い、送信部と受信部の間に障害物があっても平気ですし、太陽の強い光に影響されることもありません。
 私の場合、ラジコンや家庭用品を改造して、内部にリレーを設けた無線リモコンを自作しました。リモコンの機能としては最高なのですが、内部のICから信号を取り出してトランジスタで増幅しリレーを駆動させる必要があるなど、改造に電子回路の知識が必要であり、誰にでもお勧めできる方法ではありません。そこで既製品で無線リモコンがないか探していたのですが、最近 (株)ナテックという会社が販売しているのを見つけました。電波の到達距離はかなりあるし、混信にも強いようです。興味のある方は調べてみてください。

有線リモコン(ケーブルレリーズ)を使う
カメラから手元まで、オプションのケーブルでつなぐ方法です。10メートル近い長さが必要になるので延長ケーブルを使うとか、別の電線を割り入れる改造が必要となります。ケーブルはラインに沿わせて手元まで持って来させるのですが、その配線が面倒だし、何といってもケーブルが写真に写ってしまうのが最大の欠点です。

インターバルタイマーを使い、自動的に撮影させる
カメラによっては、あらかじめ設定した時間間隔で勝手に撮影してくれる機能があるので、それを利用する方法です。ただしこの機能をもつカメラは滅多にないことや、狙ったタイミングで撮れないという大きな欠点があります。


 さて、次はレンズです。一眼レフですから様々なレンズが使えます。画面対角線方向の画角が180度もある魚眼レンズを使えば、コンパクトカメラでは絶対に撮れない写真を手にすることもできます。
 しかし今回の空撮目的からいえば、焦点距離20〜50ミリ程度の普通の広角レンズの方が適していると私は思います。その中で最適と思われるレンズが、焦点距離24〜70ミリ程度、F値がF3.5〜F5.6程度の標準ズームです。このクラスのズームレンズは一眼レフボディとセットで販売されていることも多く、小型軽量かつ安価なのが特徴です。

 このような軽いレンズを取付けた状態で、カメラ関連装備の重さはだいたい1kg弱になると思われます。これをキャノピーに装着する器具を製作することにしましょう。



製作中

 基本的な構造とキャノピーへの装着方法は、前回コンパクトカメラを使用したときと同じです。ただし、より大きく重いカメラを使用しますので、器具自体も大き目に作る必要があります。もちろん使用する素材は、段ボールをおいて他にありません。

 左が製作中の画像です。器具自体の横幅は前回と同様、キャノピーのセル幅(というよりライン取付け幅と言った方が適切かも)と同じにします。カメラを定規で採寸し大まかな設計を考えた後、ときどき現物合せをしながら製作していきます。

 製作にあたり留意した点のひとつが、なるべく小さく、空気抵抗が少なくなる形状にすることです。基本的にはプロテクション性能を考えカメラをすっぽり覆う箱型としましたが、なるべく小さくなるようにし、さらに前後面は斜めにして、少しでも空気抵抗が少なくなるように配慮しました。

全体図

 ひととおり完成したら、ガムテープを貼りまくって表面を覆い、強度アップを図ります。
 両端についているヒモをキャノピーのライン接続用ループに通し、しっかりと結んでやることで、キャノピーへ装着できる仕組みです。

 本当は発泡スチロールを使って滑らかな曲線を描く流線形カウリングを作る予定だったのですが、そうするとかなりデカくなってしまうのと、さすがにやりすぎ(笑)と思われたのでシンプルな形状にしました。


 それとせっかく一眼レフを使うのですから、今回の空撮に使えるようなレンズを複数もっている場合は、レンズ交換を考慮した形状に作っておくと良いと思います。

 たとえば28〜80ミリズームを使うのを前提に作ったが、後になって手持ちの18〜35ミリズームを使おうとしたらレンズが大きくて箱に入らない、なんてことがないように、箱のレンズ面を大き目に切抜いておくなどの工夫をしておきます。


内部

 この器具へのカメラ固定を簡単に行えるように、厚紙(キングファイルの廃品利用)を使ったカメラ押さえベルトを作りました。

 まず内部へカメラを入れ、両端とも固定されている奥の押さえベルトに差し込みます。その後、手前側のベルト(片端がベルクロで脱着可能になっている)で固定させます。

 カメラの隣にある四角い白い箱は自作無線リモコンの受信機です。


開閉部分

 カメラを入れる箱のフタも、ベルクロで簡単に開閉できるようにしています。フタのヒンジ部は裏表両側から貼ったガムテープで、その役割をさせています。フタ内側にはスポンジを張りつけ、内部でカメラがずれないようにしています。
 このフタと本体間の隙間や、レンズ周囲の隙間をなるべく少なくして密閉性を高めることで、万一キャノピーを田んぼに落としちゃって泥まみれになっても、カメラを守ることができる...かもしれません。

 それはさておき、いろいろ工夫した構造や仕掛けが狙い通りに機能した時は、とても気分がいいです。思った通りにいくことが、なかなか無いだけに。
 ちなみにこの空撮器具、空撮仲間である小林氏の命名を一部頂き、「ゴッドアイ零式」という、大袈裟な名前をつけてみました。


収納時

 私が今乗ってるキャノピーはライン取付け幅が広いので、それに合わせて作るこの空撮器具の横幅も当然広く、約55センチあります。
 そのままだと収納にも場所を取るし、テイクオフまで持っていくのも大変です。そこで画像のように普段は折りたたんでおきます。

 所詮段ボールですから、たとえ折るつもりがなくても、そのうち自然に折れてしまうと思いますが。

 それを見越して、きれいな折れ目にするために、この折れ目と段ボール中芯の波打ち方向が平行になるように考慮しておくのがポイントです。



 撮影にあたって留意する点は前回と同じです。キャノピーから出ているライン接続用のループの中に器具両端のヒモを通し、結びつけます。装着場所はキャノピーの中央部、最もテンションのかかるBまたはCラインが適当でしょう。

 テイクオフについて。器具自体が多少大きく重くなったので最初は心配していたのですが、ある程度の風があれば何事もなかったようにライズアップできます。変に意識しないほうがいいのかもしれません。
 (2004.4)





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