空撮するとき、カメラを手に持って撮影するぶんには問題ないのですが、そうでない場合どうやってシャッターを切るか、悩むことがあります。
最も手軽で確実なのが、ケーブルレリーズ(有線リモコン)を使う方法です。しかしケーブルレリーズには、カメラの設置場所によってはケーブルで繋ぐことが難しかったり、ケーブル自体が写真に写り込んでしまう等の欠点があります。
そこで必要なのがケーブルを使わない、電波や赤外線を使ったリモコンです。でも、こういったコードレスのリモコンがメーカーのオプションにもない場合はどうするかというと、そう、自作するしかありません。
電波を使った無線リモコンは赤外線リモコンと違って、送信部を受信部に向けて使う必要がないので便利なのですが、ここでは比較的コンパクトにでき、製作が簡単である(と思う)赤外線リモコンの自作について書いてみようと思います。
ただし最初にお断りしておきますが、自作にあたっては半田ゴテやテスターなどの道具類と、ある程度の電子工作の知識が必要です。またこの自作リモコンの受信器はリレーを用いたONとOFFの電気的な接点しか取り出すことができません。カメラの種類によっては測光・フォーカスロック用の接点が必要である可能性があります。従ってどの一眼レフでも使えるというわけではありませんのでご注意ください。
(とりあえず、私の使用しているPENTAXのAFカメラでは使用可能でした。いずれにしても自己責任の範疇ですので、うまく動作しなかったり、カメラが壊れてしまったりしても責任を持つことはできません。各自において判断されて下さい。)
今回作ろうとしているリモコンの構成としては、カメラのシャッターを切りたい時のみ赤外線を送信する送信器と、その赤外線を受信してカメラのシャッターを切る受信器に別れます。
送信器については、これは身の回りにたくさんあるテレビやビデオ等の汎用リモコンが利用できます。たぶんどの方も不要なリモコン送信器を持っているかと思いますので、それを流用するだけです。(なるべく小型のものがいいですね。)
受信器ですが、これは自作する必要があります。
テレビやビデオの赤外線リモコンでは、いくつも付いてるボタンを区別する必要があります。 どうやっているかというと、送信器のボタンが押される→それぞれのボタンに応じた各社独自のコードのシリアルデータを約38kHzでパルス変調して赤外線で送信→受信器でそれを判別、なんてことをしています。何種類ものリモコンを使っても”混信”しないのはそのためです。この方式で受信器を自作できればいいのですが、それはとても無理な話です。
そこで今回作る受信器はそんな高機能は諦め、単に赤外線入力のONかOFFかだけ判別できればいいものとします。つまり受信器は赤外線を受信したという情報のみを出力するので、送信器のどのボタンを押しても同じ動作(受信器のリレーがONになる)をします。
自作した受信器の回路図を下に示します(今回は、私よりずっと電子回路設計に詳しい方に設計試作をお願いしました)。部品代としては1000〜1500円程度あれば集められると思います。
・受信モジュール
送信器からの赤外線をから約38kHzの搬送波を取り除き、電気的なシリアルデータを出力するための部品です。この型番でなくても、多分使えると思います。
・動作確認用の高輝度LED
赤外線を受信したことを示すLEDです。屋外での動作確認に使うので、高輝度タイプを使用します。(無くても構いませんが)
・電源
9〜12V程度で最も軽量コンパクトな電源ということで、角形の006P電池(9V)を使用します。ただし受信器の動作時に、LEDおよびリレーの駆動時に流れる電流により電源電圧がかなりドロップします。実際、ちょっと古いマンガン形の006Pを使ってたら電源電圧低下による誤動作がありました。 少しでも内部抵抗の少ない、アルカリ電池の使用をお勧めします。
・リレー
小電力で駆動できる小型のリレーがベストです。LEDとパラに接続します。またON-OFF時の逆電圧を逃がすためのダイオードを付けないとトランジスタが壊れますので、必ず付けるようにして下さい。なお、9V定格のリレーはあまり種類がないのでご注意下さい。(OMRON G6H2 9Vなど消費電力の少ない物がベストです。)
・カメラへの接続
カメラメーカーオプション品のケーブルレリーズを途中で切って、カメラ側のコネクタのみを使用しました。
PENTAXカメラの場合接点は3つあり、役割はCOM(コモン)と測光開始&AFオン、そしてシャッターレリーズです。AFオンとシャッター接点をひとつにまとめてしまい、COM接点との間に受信器のリレー接点が接続されるようにします。
汎用リモコンのボタンを押すと、受信器動作→カメラのAFが動作→合焦→シャッターが切れる となります。受信器のリレーは約0.6秒間ONします(長さはRC回路の時定数を変えて変更可能)が、この間にカメラのAFが合焦しない場合はシャッターが切れません。よってAFの迷いやすい被写体を撮影する場合などは、カメラをMF設定にしておくといいと思います。
・送信器との相性
この受信器は蛍光灯の光などに含まれる赤外線ノイズでの誤動作を防止するため、数ms程度連続した赤外線を受けないと動作しないようになっています。送信器に使う汎用のリモコンによっては動作しない場合があります。そんな時はいくつか別のリモコンを試してみるか、BとCの間にある1MΩの抵抗を500kΩ程度にするなどして調整して下さい。(ただし10kΩ以下にはしないこと。)
製作のポイントは、極力小さく作ることです。
このため既製の基板等は使用せずに、赤外線受信モジュールを中心にしてパーツを次々に半田付けしていく、いわゆる空中配線で済ませています。
これを写真にあるような小さなプラスチックのケースに収納します。 写真の試作品ではかなり無理矢理押し込んでしまいましたが、もうすこし大きいケースを使って電池をケース内に入れてしまってもいいと思います。
ケースや電池にベルクロを貼り、予めカメラにも貼っておいたベルクロ同士でくっつけたり、雲台など別の空撮器具にベルクロ設置したりなど、用途に合わせて仕上げます。
送信器には、もう使わなくなったビデオカメラ用のリモコンを使用しました。小さいのでブレークコードを持つ手にそのまま握れます。これに写真のようにヒモとゴム輪を付け、このゴム輪を手首に巻いておけば落下防止対策は万全です。
(2001.5)
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