空撮器具10(キール取付・リモコン可倒式)



 GoProHDなどのカメラを機体のキール後端に取り付ける場合、アングルを工夫した試みとして、空撮器具3(コンパクトデジカメ・延長式)空撮器具8(レンズ交換式デジカメ・斜め後方から撮影)のように横に張り出す方法があります。真後ろからの撮影とは少し違う、空を飛んでいるという臨場感を表現できるのでは? と勝手に思っています。

 今回はさらにその応用として、カメラを横ではなく下に張り出した(吊り下げた)らどうか、という考えを実現した器具を紹介いたします。
単にキール後端に取り付けた場合に比べ、下に張り出したカメラから撮影するわけですから、パイロット越しに見る前方の景色は違って見えるだろうし、機体の下面も写し込めるから、よりパイロット目線に近いアングルになるのでは?と期待が膨らみます。

 ただし問題があります。キールよりさらに下にカメラを付けるわけですから、そのままではテイクオフやランディングの際に確実に地面にぶつかります。この課題をどう解決するかが、カメラを下に張り出す方法のキーポイントになります。
 私が選んだのが、離着陸時は収納しておいて、撮影時に張り出す方法。しかしどうやってこれを実現するか。
 離着陸時はヒモか何かで上方に収納しておき、空中に出てからそのヒモを緩めてやる感じで出来そうですが、そのヒモを手元まで持ってくるのが大変です。VGのように予め機体側にそういう加工がしてあれば楽なのですが、もちろんそんな加工はされていません。もっと簡単かつ安全な代替方法はないものか?

 この長年の悩みの解決策として思いついたのが、無線リモコンによる遠隔操作です。手元のボタンを押すと無線でモーターが回り、カメラを下に張り出させる。着陸前には同様にリモコンでモーターを回し、カメラを収納する。
 この考えをもとに作ったのが、今回の器具です。


 まず無線リモコンですが、ヒモの繰り出し・巻上げ(モーターの正・逆回転)のために2チャンネル、カメラレリーズのために1チャンネル、合計3チャンネル以上のものが必要です。私は315MHz帯の電波を使用した4ch送・受信機セットをインターネット通販(例えば
ここです。)で購入しました。1500円程度です。

 送信機はボタン電池を使用する完成品ですが、受信機は5V電源の基板のみなので、まず電源を用意してやる必要があります。
 アルカリ単3電池3本(4.5V)でも動くとは思いますが、モーターと共通電源にして電池の重量を減らしたいのと電圧を一定に保つために、単3電池2本(3V)から5Vを取り出す昇圧型DC-DCコンバーターを秋葉原の秋月電子で購入しました(これです)。 リップル電圧が結構出ているようで受信機の動作が変だったので、20μFの電解コンデンサを追加しました。

 一方、受信機の出力はデジタル信号のみなので、トランジスタで増幅してリレーを動作させます。この際、リレーを2個組み合わせることによりモーターへ供給する電圧の極性を変え、正・逆回転できるようにします。GoProHDのレリーズもできるよう、電源onにするためのリレーも接続します。
(このあたり、長くなりますので詳しくは省略します。もし興味がおありの方がいましたら(いないと思いますが^^; )、個別にメール下さい)

 モーターはタミヤの工作キットに使われていたものを、減速ギアユニットごと流用します。これにヒモを巻き上げるためのリールを取付けます。リールはミシン下糸用のボビンを流用しました。リールの回転速度が早すぎるとヒモが絡みますので、適度な減速ユニットを選んでやる必要があります。

 これら受信機やモーター等を取り付けた駆動ユニットを、キールに取り付けられるようにした台(厚紙製)の上に設置します。ヒモが緩んで絡むのを防止するための押さえ板を付けたり、伸縮式のロッドアンテナを付けたり、様々な工夫を詰め込んであります。ヒモは丈夫なパラグライダー用のラインで、最も細いものを使っています。
 全体的な形状はキールに沿うように細長い船形にします。そのままではメカが剥き出しのハカイダーみたいな外観になるので、防塵防滴を兼ねて、何かカバーで覆ってやることにします。そこでスタイロフォームを削って紡錘形フェアリングを作ってみました。見た感じ、空気抵抗軽減を考慮したスマートな形(自画自賛)に仕上がりました。これでフライト中に雨に降られても大丈夫だし(その前にそんな天気で飛ばない方が先ですが)、テイクオフの風待ちで降られても安心です。(そんな天気で機体を広げない方が重要ですが)




 次にステー部です。離着陸時はヒモで上方に引っ張られ、キールに沿って収納されていますが、リモコン操作でモーターを回してヒモを繰り出すことにより、重力で下方に張り出す(垂れ下がる)ようになっています。
 キール固定側は駆動ユニットと同じく、廃キールを半分に切ったものにゴムを貼り付けてベルクロで固定、カメラ側は廃キールをガス台で熱して柔らかくした後、平らに延ばしたアルミ板を使って作りました。大部分に7075材を使用した軽量仕様です。

 基本的な構造はバテン材を利用し、固定部分のネジを軸にした可動式ステーなのですが、バテン材を2本使用し、キール固定側とカメラ側で平行四辺形の構造で動くようにすることにより、張り出し具合に関わらずカメラの上下方向の向きを一定に保てるようにしています。GoProHD電源on/off用のコードを設置してステー部も完成。いよいよテストです。




 テイクオフに着いて機体を組み、この器具を装着。ベースバーにベルクロ固定した送信機のボタンを押してモーターを回し、巻き取られたヒモを繰り出していくと、ステー部が次第に下がってゆきます。いい感じです。
 が、周囲のフライト仲間の反応が気になります。最初は皆オオッ、スゴイという感じで関心してくれていたのですが、モーター音をたてながらリモコンで上下するステーを見ているうちに、なぜかほとんどの人が「あーあ、やっちゃったよー」とでも言いたげな呆れた感じの表情に。
なんで? 凝り過ぎなのが問題かもしれません。


 それは放っておいて、フライトしてみた結果なのですが...
 まず気づいたのが、ハングは真後ろを見るのが結構大変なために、ステーが下がっているのか上がっているのか良く見えない点です。
 リモコンのボタンを押してヒモを繰り出す際、押す時間が長すぎるとリールに巻かれたヒモが無くなり今度は逆に巻き上げを始めてしまうので、ステーが下がりきったのを見計らってボタンを離す必要があります。しかしステーが見辛いのでこの操作が大変です。これは文字通り、盲点でした。バックミラーが欲しくなりますが、そんなダサイものをつけるわけにもいきません。

 また、送・受信機とも金属製の機体構造材沿いに設置せざるを得ないためか電波の到達範囲が狭く、リモコン操作に反応しないことがあります。
 リモコンはヒモを繰り出す・巻き上げる間ずっと安定してonしてなければならないのですが、途中でモーターが止まったり、あるいは回りっぱなしになったりなどします。何回かテストを繰り返す中でアンテナを改造したりしましたが、なかなかリモコンの不安定さは解消しません。



 それでも何とか撮影してみた結果がこの写真です。
 確かに下方からのアングルにはなってはいますが...
 なんか、普通にキール後端につけたものと大して変わらないじゃん!

 試行錯誤の旅はまだまだ続きそうです。





追記 2013.10
 少しでも電波の感度を良くするために、受信側のロッドアンテナをキールと直角の向きになるよう設置しました。それと減速比が大きすぎてステーの上下に要する時間が長いので、減速ギアユニットからギアを抜きボビンの回転速度を上げました。
 ただしこの場合問題なのが、ステー部の重量でヒモが引っ張られ、モーターを動かしてないのに回ってしまい、ステー部が下がってしまうこと。そこで1段目のギア部分に写真のように摩擦抵抗になりそうなもの(発泡ゴムにベルクロを貼ったもの)を置いて、空転を防いでいます。
 それと改造しているうちにDC-DCコンバーターをショートさせて壊してしまったので、受信機用の5Vは電池で確保することにします。電池をもう一本追加して4.5Vにするか、6Vの積層電池(4LR44や2CR5等)を使うかどちらかになります。4LR44の方が小型ですが、リレーの駆動電源にも使うので私はカメラ用のリチウム電池2CR5を使いました。端子部に直接リード線を半田付けして、スイッチも付けます。元々使っていた単3電池2本はモーター駆動専用となります。


ページ最終更新:2013/10

もどる