3.北海道最高峰、旭岳(1)


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○8月2日(月)

 朝5時に起きる。周囲が明るくなると、目覚し時計もないのに自然に目が覚めてしまう。キャンプ生活は早寝早起き。なんて健康的なんだ。

 すかさず天気をチェックする。もやがかかっているが良くなりそうだ。7時発のロープウェイに乗れるか?
旭岳ロープウェー  というのも、今日は北海道を代表する山系、大雪山を巡り、その最高峰である旭岳にも登ってしまおうと企てているからだ。旭岳へは途中までロープウェイが掛かっており、その発車時刻が7時なのだ。

 とりあえずコーヒーで体を目覚めさせ、簡単にカップラーメンで腹ごしらえをする。
 今日はテントを張ったまま出掛けるので、適当な荷物をディバックに詰め込み、テントのタープを閉める。モトクロスブーツではなくスニーカー+Gパンのいでたちでバイクの置いてある所まで行くと、結構雲が多く、大丈夫か?と思う。まあ、行くだけ行ってみようと、5時40分に出発する。

 走り出してもどうも天気がパッとしない。晴れてこないようだったら一旦戻り、テントを撤収して層雲峡方面などの別の場所に行こうかと思いつつ、とりあえず国道237号から右折し旭岳へと向かう。
 しかし、そこにはそれまでの心配を吹き払うような光景が展開していた。なんと、前に聳える旭岳の周りは晴れ渡り、まぶしく光り輝いている。信じられぬ程の直線道路をひたすら進む。予想外の展開に、心が踊る。
 一方、山を登って行くにつれ気温は下がってゆく。ひんやりとしてきた。

 程なくロープウェイ乗り場に着く。2600円で往復の券を買う。俺の他にはみるからに山登りの格好をした人が数人いるだけの、静かな山の朝だ。
 ロープウェイは雲ひとつない青空の下、俺を運ぶ。天女ヶ原駅(中継駅)で乗り換え、その上の終点 姿見駅(山頂駅)へ。
 いよいよだ。7時25分、標高1670mの姿見駅からアタックを開始する。目の前には、朝日をシルエットに黒く堂々と浮び上がる活火山、旭岳が噴煙を上げている。

旭岳への登り

・姿見駅→旭岳石室
 ここまでは10分ほどで着く。姿見の池を見る。夏だというのに、池のほとりにはまだ雪が残っている。
 この先は、600m程の標高差を持つ山頂まで火山性の岩・小石ばかりの急な勾配の登山道をひたすら登ってゆかなければならない。

・→旭岳へ
 かなりハードな登り。バイクへの積載量に制限があるので、履き古しのスニーカーしか持ってこなかった。だから丸っこい石のある所などは滑り、結構苦労させられる。
 大休止、小休止を入れながら、それでも周りの登山者に比べハイペースで登る。他の人たちは縦走装備のため重いリュックをかついでいるが、俺のディパックには一日ぶんの水分と食料しか入ってないからだ。
 噴煙を上げる火口を眺めながら昇ってゆく。活火山かつ森林限界を越えているので、周辺には樹木は全くない。殺風景な眺めだが、そのかわり見晴らしはすこぶるいい。
 しかし、それにしてもハードだ。
 1時間半以上かけて、やっと頂上直下にある大きな岩、”金庫岩”までたどり着く。もう少しだ。
金庫岩 旭岳山頂  9時丁度に頂上到達。素晴らし過ぎる眺めだ! 北海道で一番高い場所にオレはいる。2290m!!
 はるか雲海の向こうには斜里岳まで見える。つめたい風が心地よい。モトクロスジャージ一枚でも登ってる時は暑かったが、一気に体が冷える。
 標高は2000m級とはいえ、緯度の高いここ北海道ではこの高さの気候は本州の3000m級の山々に匹敵する。大雪の山々が夏の表情を見せるのは7,8月だけであり、この旭岳などは8月下旬にはすでに最低気温が氷点下となる日もあるという。9月に入り、初雪の便りを一番早く知らせるのも、ここ旭岳だ。

山頂から富良野方面を見る
 それにしても、すごい.... 周囲へと目をやると、音を立てて噴煙を上げる火口はこの旭岳を深くえぐり、その裂目は裾野まで続いている。そして北海道の先住民、アイヌの人たちが”カムイミンタラ”と呼ぶ大雪の山々が一望に見渡せる。

・→下りの雪渓
 30分ほど頂上で過ごすと、登ってきた方向とは逆へ下り始める。まずは間宮岳方面へ。小石が浮いている滑りやすい急斜面の後、すぐに雪渓になる。下界は夏だが、ここには一面に雪が広がっている。つるつるして怖い。
 しかしそれを逆手にとって尻にビニールを敷き、ソリよろしく滑っている人がいた。楽しそうだ。なおかつ楽で速い。今度来る時は尻で滑ろう。

 ここでハーレースポーツスターに乗る、東京からきたライダーと出会う。その、ハーレー氏と一緒に旭岳一周コースを歩くことにする。




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