フッと顔が朧気に浮かんできて、すぐに消える。
(あれは……誰だ?)
 再び、朧気に現れる。男……いや、少年?
(私は彼を知っている?)
 再び、今度ははっきりと少年の姿が見える。にっこりと微笑むその邪気のない笑顔に、合点がいった。
(ああ、やはり私は、彼を知ることになる。彼の最期に私はいたから。私が初めてこの《力》を使った過去に、彼の未来が重なったんだ)
 網膜を焼く真白な光の洪水。

 真白い、輝くような光の渦……その中に彼らはいた。
 4歳の少年と26歳の青年と。
 そして一転して、ほの暗い中に、少年の未来と青年の過去があった。
「そう、私たちは出会う。ほんの一瞬。それは、本当に僅かな時。そして、初めての、最後の、当麻と《当麻》の出会い」

「あなたの過去を私は知らないし」
 と、光の渦の中の少年が言う。
「あなたの未来を私は知らないし」
 と、光の渦の中の青年が言う。
 朧気になりつつある二人の姿。
「でも、それで良かったのです」
 二人が同時に言ったのか。それとも、どちらか一人だけが言ったのか、それは判らなかった。
 そして、何もかも見えなくなった世界に、その真実を教えてくれるものは、何もなくなった。

 そして、少年と青年が交差し、そしてさらに、少年の未来と青年の過去が交差するのだ。
 少年の名は、堂士、青年の名は柊(ひいらぎ)と言った。

 時は逆行する。ほんの少しだけ。今を現すためにほんの少しだけ……。


続く→