3rd |
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【 thumb 】 |
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時と場所を選べば、つり皮と酸素が確保できる。半年に1度くらいならば、運良く途中からシートに |
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座られるチャンスが来る。しかし大抵は・・・誰かの背中で息苦しい思いをするんだ。そんな日々が |
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続く中、いつもは沈黙が守られる満員電車で笑い声が響いた。 |
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誰かがドアに指を挟まれてしまったのだが、電車は当然何も気付かず走り出した。その近くにいた |
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男性は、車掌と話ができるスピーカーに向かって訴えた。「ドアに指を挟まれている人がいます!」 |
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車掌が尋ねる。「その方は何両目に乗っていらっしゃいますか?」 いつしか電車は停まっていた。 |
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「○両目の真ん中のドアです」 「どちら側ですか?」 「進行方向に向かって左側です」 |
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ここまではOK。それらしい会話だもんね。その後、「その方は、男性ですか、女性ですか?」 |
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――関係あんの? ま、病院へ連れて行くために最寄りの駅で停まった時、めがけて行く相手を |
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知っておかなきゃいけないのかな・・・「女性です!」「何指を挟まれたんですか?」「親指だそうです」 |
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この辺りからクスクスと笑い声がし始めた。そんなことを聞く必要があるのかと疑問に思う気持ちは、 |
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周りも本人も一緒。車両中の視線を浴び始めた彼女は、みるみる顔が赤くなっていった。 |
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そして。ついに。「幾つくらいの方ですか?」――爆笑の渦である。なによあんた、年齢なんか聞いて |
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どうするの。しかも女性だってば。失礼やん? ただでさえ、格好悪いことで注目浴びてるのにさぁ。 |
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何両目のどのドアかまで聞いたんだからそれでいいやん。そんなに根ほり葉ほり聞いちゃって、 |
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もしかして車掌さんったら、ナンパでもする気なんかいな? それともこれはマニュアル通りなん? |
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早く発車して、左側にホームがある駅に停めて、ドアを開けてあげなよ。皆、そう思っていた。 |
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結局その22歳(笑)の女性はいくつ目かの駅で待機していた駅員2名に降ろされ、足早に消えた。 |
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最後まで恥ずかしそうに、顔を真っ赤にして下を向いていた。気の毒だったが、しかし、あの時ほど |
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和んだ通勤電車なんて、後にも先にも1度きりである。 |
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28 Mar 2001 |
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